エマヌエーレ・フィリベルト・ディ・サヴォイア (1972-)

エマヌエーレ・フィリベルト・ディ・サヴォイア：激動の人生を歩むイタリア王位請求者

エマヌエーレ・フィリベルト・ディ・サヴォイア（Emanuele Filiberto di Savoia）は、1972年6月22日にスイスのジュネーヴで生まれました。イタリア最後の国王ウンベルト2世の孫にあたり、サヴォイア家の当主およびイタリア王位請求者としての立場を持っています。イタリア王政廃止に伴う国外追放という歴史的背景の中、亡命先で誕生した彼の人生は、波乱に満ちたものとなりました。

生い立ちと亡命生活

父はイタリア王太子ヴィットーリオ・エマヌエーレ・ディ・サヴォイア、母は水上スキー選手のマリーナ・リコルフィ・ドーリアです。祖父母であるウンベルト2世とベルギー王女マリーア・ジョゼは、ポルトガルへの亡命後、スイスで別居生活を送っていました。父ヴィットーリオは、スキーを通じて出会ったスイス人女性のマリーナと結婚。この結婚は、サヴォイア家のような名門貴族にとっては貴賤結婚とみなされ、家長であったウンベルト2世の強い反対を受けました。

母方の祖父は、アントワープオリンピックに水泳選手として出場したスポーツマンであり、資産家としてクラッカー製造会社を創業し、成功を収めました。しかし、サヴォイア家との釣り合いが取れない家柄であるとされ、一族の批判の対象となりました。この結婚を機に、サヴォイア家はカリニャーノ派とアオスタ派に分裂し、家長争いが激化しました。父ヴィットーリオは家長を宣言しましたが、度重なる騒動や逮捕歴から、サヴォイア家の権威は揺らいでいます。

エマヌエーレは、父からピエモンテ公とヴェネツィア公の爵位を授与され、後継者としての教育を受けました。スイスのル・ロゼを経てジュネーヴ大学で建築を専攻しましたが、卒業後は銀行家として投資業に携わるようになりました。サヴォイア家当主の入国を禁じる法律があったため、イタリアへの帰国は許されていませんでしたが、メディアを通じてイタリア国内での知名度は高かったです。サッカー好きとして知られ、サッカー番組にゲスト出演することも多く、ファッショナブルな姿も注目を集めました。フランス人女優のクロティルド・クローと結婚し、2人の娘をもうけましたが、男子継承者がいないため、サリカ法典を無視し、長女に地位を継承させることを発表しました。

イタリア帰国と新たな挑戦

2002年、反乱の扇動などを求めないこと、国内で貴族称号を用いないこと、イタリア共和国憲法を承認することなどを条件に、サヴォイア家当主のイタリア帰国が許可されました。エマヌエーレは、幼少期に亡命を強いられた父と共に、初めて故郷の土を踏みました。帰国後は、王党派の集会に参加し、王政復古を求める活動を行っています。2007年には、王政廃止時に没収された財産の返還や、国外追放による商業的損失の補償を求め、イタリア政府を提訴しましたが、一部のみが認められました。

帰国後のエマヌエーレは、実業家として投資会社を経営し、文化保護活動や慈善事業にも積極的に取り組んでいます。また、2010年にはサンレモ音楽祭に出場し、愛国歌を披露。賛否両論を呼びましたが、視聴者からの支持を得て2位に入賞しました。さらに、ダンスコンテスト番組で優勝するなど、タレント活動を本格化させ、「歌って踊れる王子様」として人気を博しました。バラエティ番組では、様々な職業に挑戦する企画が人気を集め、日本テレビの番組にも出演しています。自身がプロデュースする服飾ブランドや、フードトラック事業など、実業家としての才能も発揮しています。

サヴォイア家家長と政治活動

2024年2月に父ヴィットーリオが死去したことに伴い、サヴォイア家家長の座を継承したと主張しています。しかし、サヴォイア家内では、貴賤結婚をした父の継承権を否定し、アオスタ派が家長の座を主張するなど、家長争いが続いています。エマヌエーレ自身は、娘に家長の座を譲る意向を示していますが、男系継承を重視する一族との対立は避けられません。

エマヌエーレは、帰国直後から政治活動にも意欲を見せています。2008年の総選挙や2009年の欧州議会選挙に出馬しましたが、落選しました。イタリアでは王政復古への支持が低いことが、その原因の一つです。しかし、近年は芸能活動や事業での成功を通じて国民の支持を集めており、王党派からは期待の声も上がっています。エマヌエーレ自身も、政治活動への復帰を否定しておらず、立憲君主制の復権を訴えています。

家族と称号

エマヌエーレは、女優のクロティルド・クローと結婚し、2人の娘をもうけています。サヴォイア家の家長として、イタリア王太子の請求権と、ピエモンテ＝ヴェネツィア公の請求権を有しています。また、モナコとモンテネグロから騎士団の称号を受けています。

まとめ

エマヌエーレ・フィリベルト・ディ・サヴォイアは、亡命、帰国、実業家、タレント、政治活動と、波乱に満ちた人生を送っています。サヴォイア家の家長として、王政復古を視野に入れながら、様々な分野で活躍する彼の今後に、注目が集まります。

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