エミリアナ・トリーニ

エミリアナ・トリーニ：アイスランドの歌姫が辿る音楽の軌跡

エミリアナ・トリーニは、1977年、アイスランドの首都レイキャビク近郊のコーパヴォグルに生まれました。彼女の父親はイタリア料理レストランを経営する人物で、母親はアイスランド人。幼い頃から音楽に囲まれた環境で育ち、7歳でコーラス隊に参加、15歳からはオペラ学校で研鑽を積みました。

音楽への情熱を胸に、彼女は1994年、Spoonというバンドでボーカルとしてキャリアをスタートさせます。その後、1995年には初のソロアルバム『Crouçie d'où là』を発表。このアルバムでは、日本の音楽グループであるピチカート・ファイヴの楽曲をカバーするなど、幅広い音楽性を示しました。さらに、アイスランドのアーティストグループであるガス・ガスにも参加し、1997年のアルバム『ポリディストーション』でボーカルを務めています。

彼女の才能はアイスランド国内にとどまらず、1999年、アルバム『Love in the time of science』で世界デビューを果たします。このアルバムは、ティアーズ・フォー・フィアーズのローランド・オーザバルらがプロデュースに携わり、国際的な注目を集めるきっかけとなりました。

エミリアナ・トリーニの名が広く知られるようになったのは、2002年の出来事です。映画『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔|ロード・オブ・ザ・リング_二つの塔』のエンディングテーマを担当する予定だったビョークが、妊娠のため降板。その代役として抜擢されたのが、当時まだ無名だったエミリアナでした。彼女が歌う「ゴラムの歌」は大きな話題を呼び、映画公開後には「歌声はビョーク本人ではないか？」という問い合わせが殺到するほどの人気となりました。

その後も、エミリアナは精力的に活動を続けました。2003年には、オーストラリアの歌手カイリー・ミノーグのアルバムに楽曲を提供。2005年には、大手インディーレーベルのラフ・トレード・レコードに移籍し、アルバム『フィッシャーマンズ・ウーマン』を発表しました。このアルバムには、2000年に交通事故で亡くなった恋人への追悼の思いが込められており、その深い情感と音楽性は高く評価されました。2006年のアイスランド・ミュージック・アワードでは、「ポップアルバム・オブ・ザ・イヤー」、「ベストシンガー・オブ・ザ・イヤー」、「ベストソング・オブ・ザ・イヤー」、「ベストビデオ・オブ・ザ・イヤー」の4冠を達成するという快挙を成し遂げました。

2008年には、フランツ・フェルディナンドなどの作品で知られるダン・キャリーを共同プロデューサーに迎え、『ミー・アンド・アルミーニ』を発表。さらに、2010年には、初となる日本公演を東京・原宿のアストロホールで開催しました。

彼女の音楽キャリアは、数々の名曲カバーでも彩られています。1995年のアルバム『Crouçie d'où là』では、ヴァン・モリソン、ルル、ピチカート・ファイヴ、アレサ・フランクリンらの楽曲をカバー。続く1996年のアルバム『Merman』では、スティーヴィー・ワンダー、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ジョニ・ミッチェル、トム・ウェイツ、メラニー・ソフィカらの楽曲に挑戦しました。2005年の『フィッシャーマンズ・ウーマン』では、サンディ・デニーの楽曲をカバーしています。

エミリアナ・トリーニは、アイスランドの豊かな音楽シーンから世界へと羽ばたいた、希有な才能の持ち主です。彼女の音楽は、情感豊かで、独特の雰囲気を醸し出しています。これからも、彼女がどのような音楽を世界に届けてくれるのか、期待せずにはいられません。

もう一度検索