エミリー・バイノン

エミリー・バイノン (Emily Beynon)

1969年にウェールズのスウォンジーで生まれたエミリー・バイノンは、世界的に活躍するフルート奏者です。オランダを拠点とする世界有数のオーケストラ、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団で首席奏者を務め、その卓越した技量と豊かな表現力で聴衆を魅了しています。また、ソリストや室内楽奏者としても国際的な活動を展開しており、特に日本との関係も深く、多くのフルート愛好家に親しまれています。

音楽の道に進んだバイノンは、まずマーガレット・オゴノヴスキーに師事し、フルートの基礎を学びました。その後、ロンドンの王立音楽大学で専門的な研鑽を積み、さらに王立音楽アカデミーに進み、フルート界の巨匠ウィリアム・ベネットとアラン・マリオンのもとで表現力と技巧を磨きました。学生時代からその才能は高く評価され、将来を嘱望されていました。

プロとしてのキャリアは、グラインドボーン・ツーリング・オペラやBBCウェールズ交響楽団、BBC交響楽団といったイギリス国内の主要なオーケストラで首席フルート奏者を務めることから始まりました。これらの経験を経て、彼女はオーケストラ奏者としての確固たる地位を築いていきました。そして、1995年2月、フルート界の伝説的奏者であったジャック・ゾーンの後任として、オランダが誇るロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席フルート奏者に就任しました。これは、世界的な名門オーケストラの顔となる重要なポストであり、彼女のキャリアにおける大きな節目となりました。

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席奏者として活動する傍ら、バイノンはソリストとしても精力的に演奏活動を行っています。フィルハーモニア管弦楽団、BBC交響楽団、イギリス室内管弦楽団、ウィーン室内管弦楽団といった著名なオーケストラと協奏曲を共演するほか、シュカンパ弦楽四重奏団やナッシュ・アンサンブルなど、様々な室内楽アンサンブルとも共演を重ねています。その活動はオーケストラ、ソロ、室内楽と多岐にわたり、フルートの可能性を追求しています。また、後進の指導にも熱心で、ハーグ王立音楽院で教鞭を執り、若い世代の育成に貢献しています。

バイノン家は音楽一家としても知られており、妹のカトリーヌ・バイノンはハープ奏者です。カトリーヌもまたデンマーク王立管弦楽団やルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団で首席ハープ奏者を務めた経験を持つ実力者です。姉妹は音楽的な絆も深く、たびたび共演を行っており、共同でCDも制作しています。姉妹ならではの息の合った演奏は、多くの聴衆を魅了しています。

日本との関わりも特筆すべき点です。1992年の初来日以来、エミリー・バイノンは頻繁に日本を訪れています。NHK交響楽団との協演は、日本のクラシック音楽ファンにとって記憶に残る演奏機会となっています。また、霧島国際音楽祭ではマスタークラスの講師を務めるなど、日本のフルート奏者や学生たちの指導にも熱心にあたっています。その温かい人柄と的確な指導は多くの参加者から慕われており、日本のフルート界との間に強い絆を築いています。コンサートや公開マスタークラスを通じて、彼女は日本のフルート愛好家に広く知られ、親しまれる存在となっています。

ディスコグラフィ

ジョン・マッケイブ：Of Time and the River; フルートコンチェルト BBC交響楽団（1999年）
ラトランド・ボートン：Aylesbury Games（2000年）
パストラール（2001年）
ファンタジー -フランス・フルート作品集（2005年）
モーツァルト：管楽器のための協奏曲集〜ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席奏者たち（2006年）
Flute & Friends（2008年）
* フルート・ミステリー（カトリーヌ・バイノン（ハープ） / フィルハーモニア管弦楽団 / ウラディーミル・アシュケナージ（指揮）、2009年）

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