エミール・アンリオ

エミール・アンリオ

フランスの著名な文筆家、エミール・アンリオは、1889年3月3日にパリで生を受けました。父は著名な漫画家であったアンリ・メグロです。詩人、小説家、そして批評家として多岐にわたる活動を展開し、特に第二次世界大戦後のフランス文学における重要な一歩を象徴する「ヌーヴォー・ロマン」という言葉の生みの親として知られています。

生涯と活動

アンリオは早くから文筆の世界で才能を示しました。1906年には、憂愁を帯びた楽観主義を特徴とする最初の詩集『シルヴィに捧げる詩（Poèmes à Sylvie）』を発表し、詩人としての道を歩み始めます。

ジャーナリストおよび批評家としてのキャリアも長く、『ル・タン』紙に1911年頃から同紙が廃刊となる1942年まで、第一次世界大戦、第二次世界大戦といった激動の時代を通じて数多くの文芸時評を寄稿しました。その鋭い視点と幅広い知識は早くから注目を集めていました。

小説家としても成功を収め、1924年に発表した『アリシーまたは市民的美徳（Aricie Brun ou les Vertus bourgeoises）』は同年のアカデミー・フランセーズ賞を受賞し、作家としての地位を確立しました。

アンリオの批評活動の中でも特筆すべきは、1922年から晩年にかけて執筆された全10巻に及ぶ『文学通信（Courrier littéraire）』です。これは彼が『ル・モンド』紙などに寄せた約2000編もの書評をまとめたもので、ラテン文学からフランス文学史に至るまで、彼の広範な教養と柔軟な思考を示す貴重な文献となっています。

『ル・タン』廃刊後、彼は『ル・モンド』紙の専属書評家として活躍の場を移しました。そして1957年5月22日付の『ル・モンド』誌に掲載された評論において、当時出現しつつあった新たな傾向の小説群を表現するために「ヌーヴォー・ロマン」という言葉を初めて使用し、この言葉が広く定着するきっかけを作りました。

1945年には、フランス文学界の最高機関であるアカデミー・フランセーズの会員に選ばれ、劇作家マルセル・プレヴォーの後任として第9席を1961年に死去するまで務めました。彼の後任には作家のジャン・ゲーノが就任しています。

エミール・アンリオは、多才な文筆家としてフランス文学に貢献した後、1961年4月14日に生まれ故郷であるパリでその生涯を終えました。

主要作品

アンリオはその長いキャリアの中で、詩、小説、評論と多岐にわたる作品を残しました。代表的なものをいくつか挙げます。

『シルヴィに捧げる詩（Poèmes à Sylvie）』(1906年) - 最初の詩集
『文学通信（Courrier littéraire）』(全10巻、1922年～1954年) - 膨大な書評集
『アリシーまたは市民的美徳（Aricie Brun ou les Vertus bourgeoises）』(1924年) - アカデミー・フランセーズ賞受賞作
『アルフレッド・ド・ミュッセ（Alfred de Musset）』(1928年) - 伝記/評論
* 『La rose de Bratislava』(1948年) - 小説

アンリオの作品群は、その時代の文学動向を反映しつつ、彼自身の繊細な感性と批評精神が息づいています。特に「ヌーヴォー・ロマン」という言葉の提唱は、戦後フランス文学史における彼の功績として後世に語り継がれています。

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