エミール・モーリス

エーミル・モリース：ヒトラーの側近、波乱の生涯

エーミル・モリース（1897年1月19日 - 1972年2月6日）は、ナチス・ドイツの政治家であり、軍人でもありました。彼はアドルフ・ヒトラーの運転手として知られていますが、それだけでなく、ナチ党の初期からのメンバーであり、ヒトラーの側近として重要な役割を担っていました。

古参党員としての活動

モリースは、ナチ党の前身であるドイツ労働者党（DAP）時代からの党員であり、初期の突撃隊の前身である会場警備隊の指揮官を務めました。1923年のミュンヘン一揆後、投獄された際にはルドルフ・ヘスと共にヒトラーの著書『我が闘争』の口述筆記を行うなど、ヒトラーとの親密な関係を築いていました。

ヒトラーの運転手と恋愛騒動

出獄後、モリースはヒトラーの運転手となりますが、ヒトラーの姪であるアンゲリーカ・ラウバル（通称ゲリー）と親密な関係になります。この事がヒトラーの激しい怒りを買い、党を追放されることになります。ヒトラーは、モリースとゲリーとの婚約を認めず、モリースを厳しく非難しました。モリースは一時的に党から追放され、職を失いますが、後に復帰します。

親衛隊での活動

モリースは1932年に親衛隊に再入隊し、親衛隊隊員番号2番を与えられました。しかし、親衛隊での重要な役割は与えられず、最終的には親衛隊上級大佐に昇進するにとどまりました。1933年にはミュンヘン市の市議会議員を務めています。また、ヒトラーと和解し、以前のような親密な関係を取り戻します。

ユダヤ系の血

1935年、モリースの結婚に際し、ハインリヒ・ヒムラーは家系調査を行い、「モリースにはユダヤ人の血が流れている」という報告をヒトラーに行います。しかし、ヒトラーはモリースを党から追放することを却下しました。この背景には、モリースの曽祖父がユダヤ系であったことが関係しています。

戦後と晩年

モリースは第二次世界大戦中、ドイツ空軍に将校として勤務しました。敗戦後、非ナチ化裁判で4年間の労働収容所送りとなります。1972年、ミュンヘンでその生涯を終えました。

モリースの生涯は、ナチス党の初期から、ヒトラーとの親密な関係、そして失脚と復帰といった波乱に満ちたものでした。彼はヒトラーの側近として、ナチスの歴史の中で重要な役割を果たしましたが、その人生は愛憎、政治、そして血統といった複雑な要素が絡み合っていました。

詳細な経歴

初期:
シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン州ヴェスターモーア出身。フランス系の家系。
実科学校卒業後、時計工として働くが、横領罪で前科を持つ。
第一次世界大戦に従軍(1917-1919)。
ナチ党入党と初期の活動:
1919年、ドイツ労働者党（ナチ党の前身）に入党。
1920年、「整理隊」の指揮官に任命（後の突撃隊）。
1921年、アドルフ・ヒトラーが党首に就任し、「整理隊」は「体育およびスポーツ部」と改称。
1923年、ヒトラーの個人警護部隊「アドルフ・ヒトラー特攻隊」の初期メンバー。
1923年、ミュンヘン一揆に参加し、ランツベルク刑務所に投獄。
刑務所内でヒトラーの著書『我が闘争』の口述筆記に協力、ヒトラーと親密になる。
ヒトラーの運転手と失脚:
釈放後、ヒトラーの運転手を務める。
ヒトラーの姪ゲリー・ラウバルと親密な関係になり、婚約。
ヒトラーの激怒により、党を追放される。
労働裁判所で補償金を得て、ミュンヘンで時計屋を開業。
親衛隊への復帰:
1932年、親衛隊に再入隊し、隊員番号2番を与えられる。
1933年、ミュンヘン市議会議員に就任。
ヒトラーと和解し、以前の親密な関係を取り戻す。
ユダヤ系血統の疑惑:
1935年、ヒムラーによる家系調査でユダヤ系の血が流れていると報告されるも、ヒトラーは追放を却下。
晩年:
1937年、ミュンヘン手工業者会の会長に就任。
1940-1942年、ドイツ空軍に将校として勤務。
1948年、非ナチ化裁判で4年間労働収容所に送られる。
* 1972年、ミュンヘンで死去。

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