非ナチ化

非ナチ化の歴史と実施

非ナチ化（ひナチか）とは、連合軍軍政期間中、特に1945年から1949年にかけてドイツとオーストリアで行われた、ナチス体制を排除するための一連の政策を指します。これはナチ党関係者の粛清に加え、ドイツ社会全体からナチスの影響を取り除くことを目指しました。ドイツやオーストリアだけでなく、ナチスに占領されたフランスやオランダでも同様の取り組みが行われました。

非ナチ化の前史

連合国、特にアメリカ、イギリス、ソビエト連邦は、1943年にモスクワ会談を開催し、戦後のドイツに対する政策を協議しました。ここで無条件降伏に加え、ドイツの軍事的無力化、民主化、そして非ナチ化の方針が決定されました。1944年にはフランスも加わり、この方針を支持、1945年のヤルタ会談では、ナチ制度の徹底的な排除が強調されました。

ポツダム会談では、ナチ党員および連合国に敵対する人々を公職から排除することが決まり、その後の非ナチ化の施行に向けた動きが加速しました。しかし、非ナチ化の具体策は占領地域毎に異なり、全体的な一貫性を欠いていました。

連合国占領時代の実施

アメリカ占領地域

アメリカ占領地域では、米国政府は「ドイツ占領基本指令1067号」を採択し、徹底した非ナチ化を推進しました。社会の要職にある者に対する調査が行われ、その結果として多くの公務員が解雇されました。しかし、住民の協力が得られず、調査の結果を改ざんする事例も多発しました。

その後、アメリカはドイツ行政機構との協力を強め、1946年にはナチズムからの解散に向けた法律が成立しました。この法律に基づき、アンケートを通じて名目上のナチ党との関係を持つ人物が分類され、重罪者や積極的な支持者が厳しく処分されましたが、地域の力関係や人間関係が影響を及ぼし、制度的な問題が浮き彫りになりました。

ソ連占領地域

一方、ソビエト連邦による占領地域では、非ナチ化がより徹底的に実施されました。旧ナチ党員への公職追放が基本方針とされ、共産主義者が新たにポストに就くことで、社会構造が大きく変貌しました。ソ連はナチス指導者と通常の国民を区別し、特に末端の党員に対して復権に寛大な措置を講じました。

東西分断時代の非ナチ化の変化

1949年にドイツが東西に分断された際、西ドイツの初代首相コンラート・アデナウアーは、非ナチ化がドイツ人全体に多くの災禍をもたらしたとし、政策の終了を試みました。彼は重罪者や積極的分子以外の追放者の解除を推進し、1950年に非ナチ化の終了を正式に宣言しました。

非ナチ化の国際的影響

ドイツ以外の地域においても、非ナチ化の概念は使用されています。例えば、ロシアは2022年のウクライナ侵攻の理由の一つとして、「ウクライナの非ナチ化」の名の下に行動を正当化しました。このように、非ナチ化は戦後のドイツに留まらず、国際的にも様々な形で語られています。

非ナチ化は、単なる歴史的過程ではなく、今日においてもその影響や理念が引き続き議論されている重要なテーマであると言えます。

もう一度検索