エリウ

エリウ（Ériu）は、アイルランドのケルト神話に登場する女神であり、トゥアハ・デ・ダナーン神族の一員として知られています。彼女は戦いと豊穣を司る神であり、加えて太陽神としての側面も持っていたという説も存在します。

エリウは、古代アイルランドを統治していたとされる、土地の主権を象徴する三人の女神の長姉格にあたります。妹であるバンバ、フォドラとともに、三位一体の女神として捉えられることもあります。彼女はトゥアハ・デ・ダナーンの王の一人であるマクグレーネの妻であるとされていますが、一方で、フォモール族のエラハとの間にブレスをもうけたという文献も存在し、複雑な神話的背景を垣間見ることができます。

マイリージャ族がアイルランド島に侵略してきた際、エリウはバンバ、フォドラと共に、その侵略を阻止するために勇敢に戦ったと伝えられています。彼女は戦闘時に魔法の力を使って敵軍に泥の玉を激しく投げつけ、侵略者たちを苦しめたとされています。マイリージャ族の偉大な吟遊詩人は、エリウの勇敢な戦いぶりを称え、敬意を表しました。

アイルランド島の古名である「エリン」は、エリウの名前に由来するとされており、彼女がアイルランド文化において非常に重要な存在であったことを示唆しています。エリウは、単なる神話上の存在に留まらず、アイルランドの土地、主権、そして文化そのものを象徴する女神として、現代においても記憶されています。

彼女は、アイルランドの神話と歴史の中で、勇気、力、そして豊穣の象徴として輝き続けているのです。

参考文献
グリーン, ミランダ・J 著、市川裕見子 訳『ケルトの神話』丸善株式会社、1997年。ISBN 4-621-06062-7。
井村君江『ケルトの神話』筑摩書房、1990年。ISBN 4-480-02392-5。

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