エリコ県

エリコ県は、パレスチナ国の16県の一つであり、ヨルダン川西岸地区の東部、死海北岸からヨルダン川の河谷にかけて広がっています。この地域は、西にラマッラーから東へ続く山々や、エルサレム東側の斜面、そしてユダヤ砂漠の北部を含んでいます。エリコ県は、地理的に重要な位置を占め、その歴史と文化は深く人々に影響を与えてきました。

1997年の推計では人口は約31,501人とされ、そのうち約6,000人が難民キャンプに住むパレスチナ難民でした。2017年の調査では、人口は50,002人に増加しています。人口の変動は、地域の社会経済状況や政治的な情勢を反映していると考えられます。

経済活動の中心は農業であり、特に県都エリコ周辺の村落ではその重要性が際立っています。エリコ県には約4,000ヘクタールの農地があり、ほぼ全てが灌漑されています。この豊かな農地は、地域の食料生産を支え、経済発展に貢献しています。

エリコは、現存する集落としては世界最古のものとされており、その歴史的な遺跡や考古学的遺産は、多くの観光客を魅了しています。エリコのオアシスであるエリシア公園（エイン・エル＝スルターン）には、果樹園、ヤシ林、バナナのプランテーションなど、豊かな緑が広がっています。このオアシスは、地域の生活と歴史を象徴する重要な場所となっています。

現在、ヨルダン川西岸地区はパレスチナ国の領土ですが、エリコ県を含むほとんどの地域がイスラエルによって実効支配されています。この状況は、地域の政治的安定と経済発展に大きな影響を与えています。

日本は、2006年の小泉純一郎首相の中東歴訪以来、「平和と繁栄の回廊」構想の一環として、エリコ県南部への農産業団地の建設を支援しています。ジェリコ農産加工団地（JAIP）事業は、地域の経済活性化に貢献しており、安倍晋三首相や河野太郎外相も過去にJAIPを訪問しています。さらに、日本は母子手帳の普及や学校建設などの事業も行っており、地域の住民生活の改善にも尽力しています。

エリコ県の行政区画は、県都エリコをはじめ、アル・アウジャ、アル・ジフトリクなどの町や、ファサイール、アン＝ヌワイマーなどの村、そしてアカバト・ジャベル、エイン・アス＝スルターンなどの難民キャンプで構成されています。これらの地域は、それぞれ異なる歴史的背景や社会的特徴を持っています。

エリコ県は、豊かな歴史、農業、そして国際協力が交差する地域です。今後も、この地域の発展と平和が促進されることが期待されます。

もう一度検索