エリザベス・ブラント

エリザベス・ブラント（ベッシー・ブラント）

エリザベス・ブラント（Elizabeth Blount）、通称ベッシー・ブラント（Bessie Blount）は、16世紀初頭のイングランドで、その美貌と王ヘンリー8世との関係によって歴史に名を残した女性です。彼女は、イングランド王ヘンリー8世の愛妾であり、王が認知した唯一の非嫡出子であるヘンリー・フィッツロイの母としても知られています。その生涯は、宮廷での華やかさと、結婚、そして子育てなど、さまざまな側面から見ることができます。

生い立ちと宮廷入り

ベッシーは、1498年から1502年頃の間に、シュロップシャー州キンレットの地主であるサー・ジョン・ブラントと、キャサリン・パーシャルの娘として生まれました。父ジョンは王室に忠誠を誓い、1513年にはフランスのギヌガットの戦いにも従軍しています。ベッシーは、その美貌が評判となり、王妃キャサリン・オブ・アラゴンの侍女として宮廷入りしました。1514年か1515年頃には、ヘンリー8世の寵愛を受けるようになり、約8年間にわたり、親密な関係が続きました。この関係は、ヘンリー8世の他の愛妾との関係に比べて、比較的長く続いたとされています。

ヘンリー・フィッツロイの誕生

1519年6月5日、ベッシーはヘンリー8世の息子を出産し、ヘンリー・フィッツロイと名付けられました。フィッツロイは、ヘンリー8世が自分の子と認めた唯一の庶子であり、1525年にはリッチモンド公爵、サマセット公爵、ノッティンガム伯爵に叙爵されました。しかし、1536年に若くして亡くなりました。息子の誕生後、ベッシーとヘンリー8世の関係は解消されましたが、その理由は明確にはわかっていません。ベッシーは、ヘンリー8世が健康な男子をもうける能力があることを証明した女性として、当時から後世まで広く知られるようになりました。

結婚と晩年

ベッシーは、息子ヘンリー・フィッツロイの養育には関わらず、1522年にギルバート・タルボイズと結婚し、宮廷から離れました。1529年には、夫がタルボイズ・オブ・カイム男爵に叙爵されましたが、翌年に亡くなったため、ベッシーは未亡人となりました。彼女は、夫の遺産を受け継ぎました。その後、1532年には王室の縁者であるレナード・グレイ卿から求婚されましたが、この申し出を断っています。1533年から1535年の間には、10歳ほど年下の第9代クリントン男爵エドワード・クリントンと再婚し、後に初代リンカーン伯爵となりました。再婚後、ベッシーは一時的にヘンリー8世の4番目の王妃アン・オブ・クレーヴズの女官として宮廷に戻りましたが、健康上の理由によりすぐに宮仕えを離れ、夫の領地に戻りました。その後、彼女は肺病で亡くなったと伝えられています。

子女

ベッシーは、ヘンリー8世との間に1人の非嫡出子をもうけました。

ヘンリー・フィッツロイ（1519年 - 1536年） - 初代リッチモンド公爵およびサマセット公爵

最初の夫であるギルバート・タルボイズとの間には、少なくとも3人の子供をもうけました。

エリザベス・タルボイズ（1522年頃 - 1563年） - 第4代タルボイズ・オブ・カイム女男爵、トマス・ウィンブッシュと結婚後、第3代ウォリック伯爵アンブローズ・ダドリーと結婚
ジョージ・タルボイズ（1523年頃 - 1540年） - 第2代タルボイズ・オブ・カイム男爵
ロバート・タルボイズ（1528年頃 - 1540年） - 第3代タルボイズ・オブ・カイム男爵

2番目の夫であるエドワード・クリントンとの間には、3人の娘をもうけました。

ブリジット・クリントン（1536年頃 - ?） - ロバート・ディモックと結婚
キャサリン・クリントン（1538年頃 - 1621年） - 第2代バーグ・オブ・ゲインズバラ男爵ウィリアム・バーグと結婚
* マーガレット・クリントン（1539年頃 - ?） - 第2代ウィロビー・オブ・パーハム男爵チャールズ・ウィロビーと結婚

ベッシーと2番目の夫の間に生まれた子孫の一人には、エリザベス2世女王の義理の娘であるウェセックス伯爵夫人ソフィー・リース＝ジョーンズがいます。

ベッシー・ブラントは、その美貌とヘンリー8世との関係、そしてその後も2度の結婚を通じて、波乱に満ちた人生を送りました。彼女の生涯は、16世紀イングランドの宮廷と貴族社会を映す鏡として、今もなお歴史の中で語り継がれています。

もう一度検索