エリザヴェータ (ロシア皇帝)

エリザヴェータ・ペトロヴナ：ロシア帝国を彩った女帝の生涯

エリザヴェータ・ペトロヴナは、1709年、ピョートル大帝とエカチェリーナ1世の娘として誕生しました。両親の正式な結婚は彼女が3歳後のことであったため、当初は非嫡出子という立場にありました。ホルシュタイン＝ゴットルプ家の公子との婚約が破談となるなど、彼女の人生は波乱に満ちていました。母と甥の崩御後、有力な後継候補として注目を集めましたが、非嫡出子の身分が足かせとなりました。しかし、ピョートル大帝の娘として軍隊内で高い人気を誇り、その存在は当時の政権にとって脅威と映っていたのです。

1741年、エリザヴェータは修道院幽閉の危機に瀕します。しかし、彼女は自らを支持する近衛軍を率いてクーデターを実行。摂政アンナ・レオポルドヴナとその政府要人を逮捕し、幼帝イヴァン6世から帝位を奪取しました。ピョートル大帝の正当な継承者として即位を宣言し、その地位を固めると、イヴァン6世をシュリッセリブルク要塞に幽閉し、脱出を試みれば殺害するよう命じました。この命令は後の皇帝たちにも引き継がれ、イヴァン6世は後に殺害されてしまうことになります。

エリザヴェータの治世は、大胆な政策によって特徴づけられます。1740年代にはベストゥージェフ＝リューミン、1750年代にはシュヴァロフ兄弟やヴォロンツォフ伯爵といった有力者が政治の中枢を担い、積極的な政策を推し進めました。財政再建のための大胆な節税・税制改革、国内産業の発展を促す政策、国内関税撤廃、貴族への資金貸付などを実施。これらの政策は貴族による産業発展を促し、繊維業や冶金業などの発展に繋がりました。ウォッカ醸造権の貴族独占なども、この流れの中で行われました。結果として、18世紀後半の経済成長を貴族層が主な受益者として享受することとなります。

外交面では、エリザヴェータの治世は対外戦争の繰り返しでした。スウェーデンとの戦争では勝利し、領土を獲得。オーストリア継承戦争ではオーストリア、イギリス側につきましたが、大きな見返りは得られませんでした。しかし、最も重要な外交的決断は七年戦争への参加でしょう。イギリスとプロイセンの同盟締結を、過去の英露間の条約違反とみなしたエリザヴェータは、プロイセン王フリードリヒ2世への反感を抱き、反プロイセン同盟にロシアを参加させました。フリードリヒ2世を弱体化させようとしたロシアは、オーストリア、フランスと同盟を結び、プロイセンに侵攻。クネルスドルフの戦いで大勝するなど、軍事的な成功を収めました。同盟国の思惑の相違が表面化する中、エリザヴェータはフリードリヒ2世の無害化という信念を貫き、同盟の結束を維持しました。

後継者問題では、1742年、甥のカール・ペーター・ウルリヒ（後のピョートル3世）を後継者に指名。ピョートル3世の妻エカテリーナ・アレクセーエヴナ（後のエカテリーナ2世）が長男パーヴェルを出産すると、エリザヴェータはパーヴェルを引き取り、溺愛しました。

晩年には健康を害し、立ちくらみが頻発するようになりましたが、薬を飲むことを拒否。1762年1月5日（グレゴリオ暦）、崩御しました。彼女が築いたロシア帝国は、その後も続くこととなりますが、その礎にはエリザヴェータ・ペトロヴナの功績が大きく影響していることは疑いようがありません。彼女の治世は、ロシアの歴史において重要な転換期となりました。その業績は、現在もなお研究され続けています。

エリザヴェータ・ペトロヴナが登場する作品

女帝エカテリーナ（1981年、池田理代子による劇画）
エカテリーナ（2014年、ロシア国営テレビドラマ）
女帝キャサリン（1995年、映画）
エカテリーナ大帝（2015年、チャンネル1ドラマ）

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