シュリッセリブルク

シュリッセリブルク：ネヴァ川の要塞都市

ロシアのレニングラード州西部に位置するシュリッセリブルクは、人口約1万4000人の歴史都市です。ネヴァ川がラドガ湖から流れ出す地点にあり、サンクトペテルブルクから東へ35kmという近接性も持ちます。1944年から1992年まではペトロクレポスチという名称でしたが、現在は歴史的な名称であるシュリッセリブルクに戻っています。

この町の最も重要な特徴は、ラドガ湖とネヴァ川を結ぶ水上交通路を支配する要塞の存在です。この要塞は、古くはオレシェク、ノーテボリ、パフキナサーリなどと呼ばれ、その起源は13世紀まで遡ります。当時、モスクワ大公ユーリー3世はノヴゴロド共和国の防衛拠点として、オレホヴェツ島（現在の要塞のある島）に木造の要塞を築きました。この要塞は、ノヴゴロドからヴォルホフ川、ラドガ湖、ネヴァ川を経てバルト海に至る重要な水上交易路を掌握する戦略拠点でした。

この要塞をめぐっては、スウェーデンとノヴゴロド共和国が激しい争奪戦を繰り広げました。1323年にはノーテボリ条約（あるいはオレシェク条約）が締結され、カレリア地方の国境が確定、東西教会の境界線ともなりました。その後も、スウェーデンとロシア勢力の攻防が続き、1611年にはスウェーデンが占領、ノーテボリ、パフキナリンナと呼ばれ、スウェーデン領となりました。

しかし、1702年、大北方戦争においてピョートル1世（大帝）は、激しい戦闘の末にノーテボリ要塞を奪取しました。この要塞を「イングリアへの鍵」と見なしたピョートル1世は、ドイツ語で「鍵の城」を意味するシュリュッセルブルクと改名しました。この地を拠点に、ピョートル1世はイングリア地方（現在のサンクトペテルブルク周辺）をスウェーデンから奪取する攻勢を展開しました。

帝政ロシア時代には、シュリッセリブルク要塞は悪名高い政治犯収容所となりました。ピョートル1世の最初の妻エヴドキヤ・ロプーヒナ、デカブリストの乱に関わったヴィルヘルム・キューヒェルベッカー、無政府主義者ミハイル・バクーニンなど、多くの著名な政治犯がここに投獄されました。また、元皇帝イヴァン6世やウラジーミル・レーニンの兄アレクサンドル・ウリヤノフも、ここで殺害されました。

十月革命後、要塞は一時的に博物館となりましたが、第二次世界大戦では激戦の舞台となりました。ドイツ軍の激しい攻撃を受けながらも、赤軍は要塞を守り抜き、レニングラード包囲網下の重要な拠点となりました。戦後、要塞は修復が進められ、現在は博物館として、歴史的な建造物や兵器が展示されています。

シュリッセリブルクの街自体も、ピョートル1世が要塞を奪取した1702年に建設されました。18世紀の聖堂などの歴史的建造物も残されていますが、町の主要な特徴は、ピョートル1世の命によって建設されたラドガ運河です。ラドガ湖は波が高く、航行が危険だったため、より安全な運河が建設されたのです。1719年に着工、12年後に開通したこの運河は、現在もシュリッセリブルクの重要な歴史的遺産となっています。

第二次世界大戦では、シュリッセリブルクの街はドイツ軍に一時占領されましたが、1943年に赤軍によって解放され、レニングラード解放の拠点となりました。1944年には、地名が「ピョートルの砦」を意味するペトロクレポスチに改められましたが、ソ連崩壊後の1992年に元のシュリッセリブルクに戻されました。

今日、シュリッセリブルクは、その複雑で魅力的な歴史を伝える、重要な観光地となっています。要塞、ラドガ運河、そして街の歴史的建造物を訪れることで、ロシアの歴史を肌で感じることができます。

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