エリニャ攻勢

エリニャ攻勢

エリニャ攻勢（えりにゃこうせい）は、1941年8月30日から9月8日にかけて独ソ戦において行われた赤軍の軍事作戦で、バルバロッサ作戦の一環として位置付けられています。この作戦はドイツの第4軍がスモレンスクの南東約50キロメートルの地点に位置するエリニャ突出部に対して実施されました。赤軍にとっては、敵軍によるテリトリーの侵略に対する初めての反撃であり、エリニャは彼らが奪還した自国の土地となりました。その結果、赤軍の士気を高める重要な出来事となり、両国によるプロパガンダ戦でも大きな役割を果たしました。

背景

エリニャはスモレンスクの南東にあり、ドイツ軍の第2装甲集団の司令官ハインツ・グデーリアンがモスクワへの進軍拠点として注目している地域でした。ドイツ軍は1941年7月19日に高地を占領しましたが、その後は燃料や弾薬の不足から前進が緩慢となり、休養・再編を行っています。その結果、エリニャの周辺地域で赤軍の反撃が頻発する状況が生まれました。

8月1日、ソ連軍最高司令部は新たな戦線の設立を決定し、ゲオルギー・ジューコフを指揮官に据えました。彼の下には新設部隊が加わったものの、指揮下の軍は練度が低く、武装も不足していました。特に第24軍と第43軍がエリニャでの作戦を命じられ、ドイツ軍を撃破し、奪還を目指しました。ドイツ側の配置は第10装甲師団、SSライヒ師団、第268歩兵師団など無数の部隊が整備されていましたが、戦局に応じて他の部隊が配置されることになりました。

攻撃の展開

エリニャ攻勢の最初の試みは8月初めに行われましたが、即座に失敗に終わりました。けれども赤軍はその後も数度にわたり攻勢に出る意欲を見せ、8月30日に再び大規模な攻撃を計画しました。攻勢では、敵の突出部を包囲するために周囲からの圧力を強化する戦略がとられましたが、航空支援の不足が赤軍の計画に影響を与えました。

9月3日になると、包囲されたドイツ軍は自身の防御を固めながらも、エリニャからの撤退を開始しました。1週間にわたる激しい戦いの末、ヒトラーは撤退を許可し、最終的に9月6日にはエリニャが赤軍の手に戻りました。この攻勢により、ドイツ軍は大きな損害を受けましたが、撤退に成功した部隊も多く、実際には赤軍の目標達成は低かったことが後に明らかになります。

居留地の破壊と戦後の影響

歴史家アレグザンダー・ワースは、戦後のエリニャの様子を記述しています。彼の記録によれば、エリニャの町は壊滅的な被害を受け、住民のほとんどが強制労働に送られてしまったとのことです。ドイツ軍の撤退前夜には、住民が教会に閉じ込められ、家々の略奪が行われたといいます。撤退後のエリニャは荒廃し、多くの村が破壊されていました。

両国のプロパガンダ戦

エリニャ攻勢はドイツ軍にとって初めての挫折となり、ナチス側はこの事実を小さく扱おうとしましたが、赤軍はこの攻勢を大成功として、士気を鼓舞する好材料としました。特に外国特派員が戦闘地域を訪問した際、ソ連の報道はこの戦いを誇張して報じ、戦果を広くアピールしました。

また、エリニャ攻勢の結果、赤軍には親衛部隊が設立され、いくつかの部隊が親衛称号を得ることになります。このように、この攻勢は対独戦において重要な意味を持ったことが理解されます。

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