エリメナ

エリメナは、古代ウラルトゥ王国の末期に王として存在した可能性が指摘されている人物です。推定在位期間は紀元前620年から605年頃とされています。彼は、同じくウラルトゥ王であったルサ3世の父として知られています。

しかし、ウラルトゥ王国末期の他の王たちと同様に、エリメナに関する情報は非常に限られています。これは、当時ウラルトゥの貴重な情報源であったアッシリア帝国が紀元前7世紀末に滅亡したこと、そしてウラルトゥ王国自体が弱体化したことが原因と考えられています。エリメナはアッシリアの史料には登場せず、ルサ3世の文書にその父として名前が記されているのみです。そのため、ウラルトゥ王国末期の王たちの相互関係については、不明な点が多く残されています。

研究者たちは、限られた情報からエリメナの実像に迫ろうと試みています。ロシアのオリエント学者ディアコノフは、エリメナをルサ2世の息子、つまりサルドゥリ3世の兄弟であると推測しました。彼の説では、サルドゥリ3世の死後、エリメナは甥のサルドゥリ4世から王位を奪い、自ら王位に就いたとしています。一方、アルメニアのオリエント学者アルトゥニヤンは、カルミル・ブルール（古代名テイシュバニ）の発掘調査の結果に基づき、サルドゥリ3世の後は順当に息子のサルドゥリ4世が王位を継承し、その後にエリメナが王位に就いたと推測しています。

ただし、エリメナの父親の名前は分かっておらず、彼がウラルトゥ王家と血縁関係にあったかどうかは断言できません。また、ウラルトゥ王国初期のルティプリとその息子のサルドゥリ1世の例があるように、息子のルサ3世が王位に就いていたとしても、必ずしもその父のエリメナが王であったとは限りません。これらのことから、エリメナの王位継承については様々な見解が存在しています。新たな史料（碑文、粘土板文書）が発見されない限り、この問題の解決は難しいと考えられています。

20世紀初頭には、ロシアの言語学者メシュチャニノフが、ルサ3世の文書に父として言及される「エリメナ」という名称は、個人名ではなく国または集団を指すという説を唱えました。つまり、「エリメナの息子」ではなく「アルメニア国（人）の息子」という意味であるとし、これが「アルメニア人」という民族名称の最古の使用例であると主張しました。しかし、他の王の文書の通例から考えると無理な解釈であり、この説は現在ではほぼ否定されています。

エリメナに関する研究は、史料の少なさから困難を極めますが、研究者たちの努力によって、少しずつその実像が明らかになりつつあります。今後の新たな発見が、エリメナとウラルトゥ王国の歴史に新たな光を当てるかもしれません。

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