ウラルトゥ

ウラルトゥ王国：古代アナトリアの謎多き王国

ウラルトゥ王国（Urartu）は、紀元前9世紀頃から紀元前585年まで、アナトリアに存在した古代王国です。その版図は、現在のトルコ東部、ヴァン湖周辺を中心に、メソポタミア北部からコーカサス南部にまで広がっていました。

名称の由来

「ウラルトゥ」という名称は、当時この地域で覇権を争っていたアッシリア人による呼称です。ウラルトゥ人は自らを、ウラルトゥ語で「ビアインリ (Biainili)」と呼んでいました。この「ビアインリ」が、現在の「ヴァン (Van)」という地名の語源になったとされています。また、「ウラルトゥ」という名は、旧約聖書に登場する「アララト山 (Ararat)」との関連も指摘されています。彼らは主神「ハルディ」を信仰していたため、「ハルディア」と称されることもありました。

歴史

前史

紀元前13世紀頃のアッシリアの記録には、「ウルアトリ (Uruatri)」または「ナイリ (Nairi)」と呼ばれる民族との緩やかな同盟関係についての記述が見られます。現在私たちが知るウラルトゥに関する情報の多くは、このアッシリアの文書から得られたものです。

黎明期

ウラルトゥは、紀元前9世紀、アラマ王とルティプリ王の時代に王国としての基礎を築きました。初期の首都はアルザシュクンに置かれていました。

拡大期

ルティプリ王の息子であるサルドゥリ1世は、紀元前832年頃に首都を現在のヴァンにあたる場所に移し、トゥシュパ (Tushpa) と名付けました。メヌア王からサルドゥリ2世の時代にかけてウラルトゥ王国は最盛期を迎え、アルメニア高原全域を支配し、東は現在のタブリーズを越え、南はティグリス川、西はユーフラテス川の上流域にまで勢力を拡大しました。

衰退期・滅亡

紀元前714年、ルサ1世がサルゴン2世率いるアッシリア軍に大敗し、ルサ1世は自害。この戦いをきっかけに、ウラルトゥ王国はアッシリアとの間で長きにわたる戦い（ウラルトゥ・アッシリア戦争、紀元前714年 - 紀元前585年）を繰り広げることになります。その後、キンメリア人やアッシリアからの度重なる攻撃に苦しみ、紀元前585年、スキタイ人の攻撃によって滅亡しました。アケメネス朝ペルシアの成立後、この地にはアルメニア人が定住するようになりました。

発掘

ウラルトゥ王国の存在は、5世紀ごろから忘れ去られていましたが、18世紀から19世紀にかけて行われた発掘調査によって、その存在が再発見されました。

言語

ウラルトゥ語は、フルリ・ウラルトゥ語族に分類される膠着語です。紀元前1500年頃から紀元前1270年頃にかけてミタンニ王国で使用されていたフルリ語と близко родственный関係にあります。

歴代国王

黎明期

アラマ（紀元前858‐844年）
ルティプリ（紀元前844‐834年）

拡大期

サルドゥリ1世（紀元前834‐828年）
イシュプイニ（紀元前828‐810年）
メヌア（紀元前820‐785年）
アルギシュティ1世（紀元前785‐753年）
サルドゥリ2世（紀元前753‐735年）
ルサ1世（紀元前735‐714年）

衰退期

アルギシュティ2世（紀元前714‐680年）
ルサ2世（紀元前680‐639年）
サルドゥリ3世（紀元前639‐635年）
エリメナ（紀元前635‐629年）
ルサ3世（紀元前629‐615？年）
サルドゥリ4世（紀元前615‐598年）？
ルサ4世（紀元前598‐590年）

ウラルトゥ王国は、その短い歴史の中で、周辺の国々と激しい興亡のドラマを繰り広げました。その足跡は、現在も遺跡として残り、私たちに古代の記憶を伝えています。

参考文献
Boris B. Piotrovsky, The Ancient Civilization of Urartu (translated from Russian by James Hogarth), New York:Cowles Book Company, 1969.
ボリス・ピオトロフスキー著, 加藤九祚訳, 「埋もれた古代王国の謎―幻の国ウラルトゥを探る」岩波書店, （1981年）
杉勇「ウラルトゥ王国」（『アジア歴史事典 1』（平凡社、1984年））

関連項目
フルリ人
ミタンニ
メディア王国
en:Satrapy of Armenia
* アルメニア王国

もう一度検索