エルサルバドル内戦

エルサルバドル内戦

エルサルバドル内戦（Guerra civil de El Salvador）は、1980年代初頭に勃発したエルサルバドル共和国における深刻な内戦です。この戦争は、政府軍と社会主義勢力であるファラブンド・マルティ民族解放戦線（FMLN）との激しい対立から引き起こされました。

背景

内戦は1969年のサッカーワールドカップに端を発するホンジュラスとの「サッカー戦争」以降、国内に存在した右翼と左翼の対立を背景に、生じました。サッカー戦争後、エルサルバドルでは小規模なゲリラ攻撃が頻発し、政治的緊張が高まっていきました。

その後、1979年のニカラグアにおけるサンディニスタ革命を契機に、複数の共産ゲリラが統合されてFMLNが結成され、政府に対しての蜂起が本格化しました。特に1980年3月24日、政府や軍による人権侵害を公然と非難していたオスカル・ロメロ司祭が殺害された事件は、内戦への突入を決定的にした出来事となります。

内戦の経過

内戦の混乱の中、アメリカ合衆国政府は反共戦略を掲げ、エルサルバドル政府に対する経済援助と軍事訓練を行いました。この支援を受けることで、政府軍はFMLNゲリラとの交戦を強化しましたが、その過程で数多くの一般市民も犠牲となりました。特に政府側による虐殺行為が目立ち、1989年11月には「アトラカトル大隊」と呼ばれる政府の対ゲリラ部隊が、無辜のイエズス会司祭たちを含む大規模な殺戮を行ったことが特に有名です。

気づかれないところで、内戦は泥沼化し、多くの無実の市民が犠牲になりました。この時期の暴力行為の85%は政府によるもので、残りの5%はFMLNが関与していたとされています。この状況は国際社会からの非難を呼び、国連による介入が求められるようになりました。

内戦の終結

最終的に、1992年に国連の仲介によって和平が実現しました。国連エルサルバドル監視団（ONUSAL）が派遣され、内戦は正式に終結を迎えます。1994年には初の自由選挙が行われ、右派政党の民族主義共和同盟（ARENA）が新たな政権を樹立しました。

内戦の影響は長期にわたり、FMLNはその後政党として活動を続けました。1994年の選挙ではARENAに敗れたものの、徐々に政治的な地位を確立し、2009年にはARENAを下して政権を奪取しました。

文化への影響

エルサルバドル内戦は、さまざまな文化作品にも影響を与えました。例えば、1986年の映画「サルバドル/遥かなる日々|サルバドル_遥かなる日々」や、2004年の「イノセント・ボイス 12歳の戦場」などが、その悲劇的な歴史を描いています。このような作品は、内戦の苦しみや、そこから生まれた人間の姿を伝える重要な役割を果たしています。

内戦の影響は現在でも多くの人々の記憶に残り、政治的、社会的な課題へリアリティを与え続けています。

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