ファラブンド・マルティ民族解放戦線

ファラブンド・マルティ民族解放戦線（FMLN）とは

ファラブンド・マルティ民族解放戦線（FMLN、西:Frente Farabundo Martí de Liberación Nacional）は、エルサルバドルにおける左翼ゲリラ組織として誕生し、後に左派政党へと転身した組織です。1980年10月10日に、反米・反極右政権を掲げる左翼ゲリラ連合体として結成されました。

結成と内戦時代

FMLNは、ソ連、キューバ、ニカラグアといった東側諸国の軍事支援を受け、エルサルバドルの社会主義化を目指しました。その構成は、以下の5つの組織からなっています。

FPL（ファラブンド・マルティ解放人民軍）: サルバドル・カイェタノ・カルピオによって1970年に結成。
ERP（人民革命軍）: ホアキン・ビリャロボスによって1972年に結成された労働運動の前衛組織。
RN（民族抵抗軍）: 1975年にERPの非主流派によって結成され、政治闘争を重視。
PRTC（中米労働者革命党）: 1976年結成。
FAL（解放軍）: 1980年にPCS（エルサルバドル共産党）の軍事部門として結成。

最盛期には6000人の民兵を擁し、内戦を繰り広げました。しかし、1991年のソ連崩壊に伴い、支援が激減。1992年に内戦を終結させ、議会主義路線へと転換しました。

合法政党への転換

内戦終結後、FMLNは合法政党として選挙に参加。党内には伝統派（革命的社会主義）と改革派（社会民主主義）の路線対立が存在するものの、着実に支持基盤を拡大。2009年には、大統領選挙でマウリシオ・フネスが勝利し、初の政権交代を実現しました。

1992年以降の発展

FMLNは1994年から2004年の大統領選挙で右派政党ARENAに敗北を重ねるも、国会や地方選挙では着実に勢力を拡大していきました。

1994年大統領選挙: ルベン・サモラを候補に立てるも敗北。しかし同年の国会選挙では21議席を獲得。
1997年国会議員選挙: 得票率33%で27議席とARENAとほぼ互角の成績を収め、市長選挙でも躍進。
1999年大統領選挙: ファクンド・グアルダド候補を擁立するも敗北。
2003年国会議員選挙: 得票率、議席数ともにARENAを上回る勝利。
2004年大統領選挙: シャフィク・アンダル候補が敗北。
2006年国会議員選挙: 得票率、議席数ともにARENAとほぼ並ぶ。

歴史的勝利とその後

2009年、FMLNは国会議員選挙でARENAを上回り、大統領選挙ではマウリシオ・フネスが勝利。20年続いたARENAの政権を奪取し、中南米の左傾化を象徴する出来事となりました。

2014年の大統領選挙では、フネス政権の副大統領であったサルバドール・サンチェス・セレンを擁立し辛勝したものの、2019年の総選挙ではナジブ・ブケレ率いる新党ヌエバス・イデアスに大敗し、2024年の総選挙では議席を失い院外政党へと転落しました。

名称の由来

ファラブンド・マルティは、親米・極右軍事政権に対する武装闘争を指導したサルバドル共産党の党首であり、1932年に逮捕・処刑された人物です。

現在のFMLN

FMLNは、ラテンアメリカおよびカリブ海諸国政党恒久協議会（COPPPAL）やサンパウロ・フォーラムに加盟しています。しかし、近年の選挙での敗北を受け、党勢の立て直しが課題となっています。

まとめ

FMLNは、ゲリラ組織として誕生し、内戦を経て合法政党へと転身。一時は政権を担うも、近年は支持を失い、苦境に立たされています。しかし、エルサルバドルの政治史において重要な役割を果たしたことは間違いなく、その変遷は、同国の現代史を理解する上で欠かせない要素です。

脚注

関連事項：

サンディニスタ民族解放戦線
パレスチナ解放人民戦線
キューバ共産党

外部サイト
FMLN公式サイト
青年組織公式サイト
* Revista Informativa - FMLNカナダ支部

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