エルネスト・エベール

エルネスト・エベール（Ernest Hébert, 1818年11月3日 - 1908年11月4日）は、19世紀のフランスを代表する画家の一人です。彼は、グルノーブルの公証人の息子として生まれ、当初は法律を学ぶためにパリへと上京しました。しかし、その中で美術への情熱を抱き、彫刻家のダヴィッド・ダンジェや歴史画家のポール・ドラローシュといった巨匠たちから美術の指導を受けました。ほぼ独学で絵画を学びながらも、22歳でサロン・ド・パリに出展し、その才能が高く評価されました。

1839年、エベールは宗教的なテーマを描いた作品でローマ賞を受賞。これにより、ローマの在ローマ・フランス・アカデミーへの留学資格を得て、1840年から1844年までローマに滞在しました。ローマでは、ドミニク・アングルやジャン＝ヴィクトール・シュネッツといった著名な画家の指導を受け、自身の芸術性をさらに磨きました。

フランス帰国後、エベールは肖像画家としてその名声を確立しました。彼の描く肖像画は、人物の内面を深く捉え、その美しさを際立たせるものとして、多くの人々から賞賛されました。また、1867年から1873年、そして1885年から1891年の間、在ローマ・フランス・アカデミーの校長を務め、後進の育成にも尽力しました。さらに、1882年から1885年の間は、パリのエコール・デ・ボザール（国立美術学校）で教授として教鞭を執り、その指導力は高く評価されました。

晩年は、グルノーブル郊外のラ・トロンシュで過ごしました。エベールの死後、1934年には彼の邸宅がエーベル美術館として公開され、彼の作品が展示されるようになりました。さらに、1978年にはパリにもエーベル美術館が開設され、彼の芸術作品は今もなお多くの人々を魅了しています。

エベールの作品は、写実的でありながらも、ロマン主義的な要素も感じさせます。彼の作品には、人物の繊細な感情や内面が巧みに表現されており、その表現力は多くの人々を魅了しました。以下は、彼の代表的な作品です。

『マラリアの女』（La Fievre）
『ローマの娘』（Une Romaine）
『眠る女性』（Jeune femme endormie）
『自画像』(Autoportrait)
『アルジェリアの娘』(Algerienne)

エベールは、多くの才能ある画家を育成しました。彼の教えを受けた学生の中には、ポール・トゥルイユベール、ジュール＝シャルル・アヴィア、ガブリエル・フェリエール、リュドヴィク・アローム、フランソワ＝モーリス・ラールといった著名な画家が含まれています。彼らは、エベールの教えを基に、それぞれの独自の芸術スタイルを確立し、フランス美術界の発展に大きく貢献しました。

エルネスト・エベールは、その卓越した画力と、教育者としての才能によって、フランス美術史において重要な役割を果たしました。彼が生み出した数々の作品は、今もなお多くの人々に愛され、その芸術的遺産は後世に受け継がれています。

参考文献

Ernest Hébert. In: Hans Vollmer (Hrsg.): Allgemeines Lexikon der Bildenden Künstler von der Antike bis zur Gegenwart. Begründet von Ulrich Thieme und Felix Becker. Band 16: Hansen–Heubach. E. A. Seemann, Leipzig 1923, S. 196.
* Dictionnaire de la peinture française. La peinture en France du Moyen Age à nos jours, Larousse, 1991 Paris, ISBN 2-03-740011-X

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