サロン・ド・パリ

サロン・ド・パリの歴史

サロン・ド・パリは、フランスの王立絵画彫刻アカデミーが18世紀に始めた公式な美術展覧会で、芸術家や作品を広く紹介する場として大きな役割を果たしてきました。この展覧会は、時代を超えて数多くの芸術家たちがその存在を認識し、影響を受ける重要なイベントとなりました。

起源と発展

サロンの起源は1737年にさかのぼり、フランス王立絵画彫刻アカデミーが開催した展覧会から始まります。当初は、アカデミーのメンバーが作品を展示するための場であり、ルーヴル宮殿内のサロン・カレ（方形の間）で行われていました。ロココ美術が栄えていたこの時代、フランソワ・ブーシェをはじめとする画家たちが注目を集めていました。

1745年、アカデミーはサロンの審査制度を改定しました。この改正により、官能的な描写が多い作品は投票によって排除されることとなり、審査の公正性が求められるようになりました。18世紀後半には新古典主義が奨励され、ジャック＝ルイ・ダヴィッドの代表作『ホラティウス兄弟の誓い』など、新たな方向性が示されました。

フランス革命とその後

1789年のフランス革命によって、サロンの運営は大きく変化しました。出品資格が拡張され、無審査の自由サロンとして、多くの作品が参加するようになりましたが、すぐに出品数が激増したため再び審査制度が導入されました。新古典主義が支配する美術界において、アカデミーの審査基準に合致した作品が高く評価されるようになりました。

1833年からは、毎年開催されることとなり、新興市民階級が美術作品に親しむ機会が増えました。ルイ・フィリップ時代には、サロンの展示数が3000点を超えるまでに成長しましたが、この時期は特に、商品の展示場としての役割も強まりました。

1850年代に入ると、サロンは徐々に保守的な審査体制に戻り、若手画家たちは不満を抱くようになります。特に、ギュスターヴ・クールベやジャン＝フランソワ・ミレーらの現実主義的な芸術が話題を呼び、その後の美術展に強い影響を与えました。クールベの『オルナンの埋葬』は、平凡なテーマを描いた傑作として評価され、また、1855年のサロンはパリ万国博覧会に吸収されることとなります。

印象派とその後

サロンの審査が厳しくなっていく中、印象派運動が生まれ、1874年に初の印象派展が開催されました。この動きは、サロンから独立した新たな芸術の形として強く支持され、多くの若手画家たちが所属しました。サロンの権威低下とともに、印象派は美術界における重要な役割を担うことになります。

1880年代には、美術の民営化が進み、サロンはフランス芸術家協会に引き継がれ、様々な団体が新たなサロンを開催するようになります。こうした変革により、画商や批評家が新しい顧客の価値を決定する重要な立場となっていきました。

現在の状況

現在も「サロン・ド・パリ」に由来する多くの展覧会が開催されています。特に、2006年以降は「Salon ART CAPITAL」として合同展が実施され、フランス芸術家協会によるものや他の団体によるサロンが継続しています。さらには、国民美術協会やサロン・ドートンヌ展など、様々なサロンが各地で展開されています。サロン・ド・パリの名残とその影響力は、現代のアートシーンにも色濃く残っているのです。

もう一度検索