エルマー・ガントリー/魅せられた男

『エルマー・ガントリー/魅せられた男』は、1960年に公開されたアメリカ合衆国のドラマ映画です。監督はリチャード・ブルックス、主演はバート・ランカスターとジーン・シモンズという豪華な顔ぶれで贈る、シンクレア・ルイスの1927年の小説を原作とした作品となっています。

この映画は、第33回アカデミー賞において、主要な3部門で受賞を果たしました。バート・ランカスターの圧倒的な演技が評価され主演男優賞を受賞、シャーリー・ジョーンズも見事助演女優賞を獲得、さらにリチャード・ブルックスの脚色も高く評価され脚色賞を受賞しています。また、作品賞と劇・喜劇映画音楽賞にもノミネートされるなど、高い評価を得ました。さらに、バート・ランカスターは第18回ゴールデングローブ賞主演男優賞 (ドラマ部門)や第26回ニューヨーク映画批評家協会賞主演男優賞など、数々の賞を受賞しています。

映画化への道のりは長く、原作を熟読したブルックス監督は、1947年に、当時デビュー2年目だったバート・ランカスターを主人公エルマー役に想定しオファーを出していましたが、映画化が実現するまでには13年もの歳月を要しました。興味深いのは、エルマーの巧みな話術と軽妙なキャラクターは、6年後、ブルックス監督が手掛けた西部劇映画『プロフェッショナル』の爆発物専門家ビル・ドルワースというキャラクターにセルフオマージュとして反映されている点です。

物語は、口八丁手八丁で、酒と女を愛するセールスマン、エルマー・ガントリーの破天荒な人生を描いています。彼は、ある町で出会った若く美しい女伝道師シャロン・ファルコナーに心を奪われます。不純な動機からシャロンの伝道活動に協力し始めますが、持ち前のセールストークと大胆な手法で、いつしか彼は人気伝道師へと上り詰めていきます。シャロンもまた、ガントリーに惹かれ、二人は結ばれます。

しかし、彼らの順風満帆な日々は長くは続きませんでした。ガントリーは、過去に関係を持った女性ルルと再会します。ルルは、かつてガントリーに利用され、娼婦に転落した過去を持ち、聖人君子として振る舞うガントリーに激しい怒りを抱いていました。復讐を誓ったルルは、ガントリーの汚れた過去を暴く写真を用いて、彼のスキャンダルを新聞で暴露してしまいます。

ガントリーの失墜は、シャロンと彼の人生を大きく揺るがします。街の人々から激しい非難を浴び、ゴミを投げつけられるなど、過酷な現実を突きつけられます。しかし、ガントリーはそれをただ耐え忍びます。最初は快哉を叫んでいたルルも、ガントリーの姿を見て罪悪感を抱き始め、彼を陥れたことを公表します。

信頼を取り戻したシャロンとガントリーは、念願の教会建設を果たします。しかし、教会落成を祝う式典の最中に火災が発生し、教会は全焼してしまい、シャロンは火災で命を落としてしまいます。悲しみに暮れるガントリーは、信者からシャロンの後任として伝道活動を続けるよう要請されますが、それを断り、一人静かにその場を去っていくのです。

Rotten Tomatoesのレビューによると、31件の評論のうち、94%にあたる29件が高評価で、平均点は10点満点中7.8点と、映画批評家からの評価も非常に高いことがわかります。

『エルマー・ガントリー/魅せられた男』は、人間の弱さと強さ、信仰と欺瞞、そして愛と喪失を複雑に絡み合わせた、見応えのある傑作と言えるでしょう。バート・ランカスターの圧倒的な演技、そして劇的なストーリー展開は、観る者の心を深く揺さぶります。

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