エルマー・H・フィッシャー

エルマー・H・フィッシャー: シアトル大火後の建築家

エルマー・H・フィッシャー（1840年 - 1905年）は、アメリカの建築界において特にシアトル大火後の復興に貢献したことで知られる建築家です。彼の作品は、街の景観を形作る重要な要素となっています。

経歴

フィッシャーの人生は、多くの謎に包まれており、彼自身の語る経歴に疑問が投げかけられています。伝えられたところによれば、彼はスコットランドに生まれ、17歳でマサチューセッツ州に渡り、ウースターで建築家としての修行を積んだとされます。しかし、シアトル市の調査によって、これが事実ではない可能性が示唆されています。

彼はその後、ミネアポリスやデンバーを経て、1886年に太平洋岸北西部に入ります。ここでの最初のキャリアは、カナダのビクトリアやバンクーバー、アメリカのポート・タウンゼンドでの建築設計からスタートしました。

1889年にシアトルに到着しましたが、この一年は非常に重要な年でした。ちょうど彼が到着する直前にシアトル大火が発生し、街の大部分が焼失してしまったのです。彼はその後、街の復興における主要な建築家として活躍することになるのです。

シアトル大火後の活動

シアトル大火は1889年6月6日に発生し、木造建築が多かった当時の市内はほぼ壊滅状態に陥りました。この大火を受けて、フィッシャーは耐火性の高い材質を用いた新たな建物の設計に取り組み、その結果、多くの建物を手掛けました。彼の設計した建物は、現在でもパイオニア・スクエア一帯で見ることができるものが多いです。

彼が好んだ建築様式はリチャードソニアン・ロマネスクであり、このスタイルはシアトルの景観に統一感をもたらしました。フィッシャーは建物のファサードにも独特なデザインを持ち込み、格子状に分割する傾向が見受けられます。このスタイルは、彼が影響を受けたヴィクトリア朝建築の特徴です。

代表作

フィッシャーの数ある作品の中でも、最も有名なのは「パイオニア・ビルディング」です。この建物は1892年にヘンリー・イエスラーの依頼で完成しました。当時、このビルは「prestige office address」として知られ、アメリカ建築家協会から「シカゴより西において最も良質な建物」と評されるほどでした。パイオニア・ビルディングは、シアトルの商業地区において重要な位置を占める建物の一つとなっています。

晩年と影響

しかし、フィッシャーのキャリアは順風満帆ではありませんでした。1893年、彼は元愛人から訴訟を起こされ、スキャンダルが彼の名声に影を落としました。その結果、彼はロサンゼルスに移住し、再び建築家としての活動を試みましたが、残念ながら成功には至りませんでした。

フィッシャーの作品群は、特にシアトルのランドマークとして重要視されており、彼のスタイルや設計理念は後の世代の建築家たちに大きな影響を与えました。彼の功績は、シアトルの歴史の中で長く語り継がれることでしょう。

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