エルンスト・ヘフリガー

エルンスト・ヘフリガー（1919年7月6日 - 2007年3月17日）は、スイスのグラウビュンデン州ダボスに生まれ、国際的に活躍したテノール歌手です。

若き日と音楽への道

ヘフリガーは、教職課程を修了後、チューリッヒ音楽院で声楽とヴァイオリンを学びました。その後、ジュネーブでフェルナンド・カプリに、ウィーンではユリウス・パツァークに師事し、研鑽を積みました。

オペラ歌手としてのキャリア

1952年から1974年まで、ベルリン・ドイツ・オペラの首席リリック・テノールとして活躍しました。モーツァルトのオペラにも出演し、その才能を発揮しました。また、オラトリオ歌手としても、バッハの受難曲における福音史家役で広く知られています。その明晰な発音と卓越した音楽性は、聴衆を魅了しました。

教育者としての貢献

ヘフリガーは、教育者としても大きな功績を残しました。1971年にミュンヘン音楽大学の声楽科教授に就任し、1988年まで後進の育成に尽力しました。また、チューリッヒやアメリカでもマスタークラスを主宰し、日本では草津国際音楽アカデミー＆フェスティバルで長年にわたり指導を行いました。その指導は、多くの音楽家たちに影響を与えました。

多彩な音楽活動

ヘフリガーは、オペラやオラトリオだけでなく、歌曲の分野でも才能を発揮しました。特にシューベルトの歌曲の解釈は高く評価されています。また、スイスの作曲家であるブルクハルト、シェック、マルタン、オルフ、ヒラーらの作品のスイス初演も務め、歴史的な演奏様式の復興にも貢献しました。

日本との関わり

1992年から1994年にかけて、山田耕筰や中田喜直らの日本歌曲をドイツ語訳で歌ったCDを発表し、日本で大きな話題を呼びました。さらに、細川俊夫やストラヴィンスキーらが和歌に曲を付けた歌曲の録音も発表しています。これらの活動を通して、日本の音楽文化と深く関わりました。

エルンスト・ヘフリガー声楽コンクール

ヘフリガーの声楽への情熱は、エルンスト・ヘフリガー声楽コンクールの創設にもつながりました。クシュタートとベルンで開催された2006年度のコンクールでは、審査員長を務めました。このコンクールは、若い才能の発掘と育成に貢献しています。

晩年と遺産

2007年3月17日、ヘフリガーは故郷のダボスで急性心不全のため87歳で亡くなりました。彼の音楽的な遺産は、息子のミヒャエルやアンドレアスによっても受け継がれています。エルンスト・ヘフリガーは、その優れた歌唱力と音楽性、そして教育者としての貢献を通じて、後世に大きな影響を与えた音楽家として記憶されるでしょう。

もう一度検索