エル・ドラード

エル・ドラードの伝説とその影響

エル・ドラード（El Dorado）とは、南アメリカに伝わる黄金の国に関する魅力的な伝説です。この言葉はスペイン語で「金箔をかぶせた」または「黄金の人」を意味し、主に16世紀のアンデス地域におけるチブチャ文化（ムイスカ文化）の儀式が起源とされています。このように豊かさを象徴するエル・ドラードの話は、大航海時代のヨーロッパ、特にスペイン人の間で広まり、新世界への冒険と探求心を掻き立てる要因となりました。

伝説の背景

エル・ドラードの伝説では、コロンビアのボゴタから北へ57キロメートルの位置にあるグアタビータ湖が重要な舞台です。この美しい湖では、地元の首長が全身に金粉を振りかけた儀式を行っていました。スペインのコンキスタドールたちはこの話を耳にし、アマゾンの奥地に黄金の豊富な土地があるという想像を膨らませました。悪名高い探検家たちは、伝説の実在を信じて南アメリカの奥地に足を踏み入れましたが、多くは死亡や過酷な環境に苦しむこととなり、共食いや発狂、破産という極端な事態に陥りました。

歴史的探検

1561年、スペインの探検家ロペ・デ・アギーレはエル・ドラードを求めた悪名高い旅の中で「報告は誤りである。この川には絶望しかない」という言葉を残しました。この伝説はドイツにも広まり、1500年代後半にはパリメ湖付近の「マノア」がエル・ドラードと解釈され、数多くの探検隊が黄金を求めて南米を訪れるに至ります。

その中でも、アウクスブルクの商人ヴェルザー家から派遣されたアンブローズ・オルフィンジャーは、コロンビアのマグダレナ河を一年間にわたって探索しましたが、黄金を見つけることはできませんでした。イギリスにおいては、ウォルター・ローリーが1617年に探検に向かいましたが、成果は上がらず翌年に処刑される結果となりました。

調査の進展と伝説の消滅

16世紀初頭にはエル・ドラードの儀式が行われたものの、その後約300年間にわたって伝説は語り継がれました。18世紀後半には地図上に描かれ、実在が信じられていましたが、19世紀初頭になるとアレクサンダー・フォン・フンボルトによる調査により、エル・ドラードの存在は消し去られました。1801年には、フンボルトがグアタビータ湖を訪れ、ムイスカ族の記録を残しています。

現在のグアタビータ湖

現在、グアタビータ湖における黄金探査はコロンビア政府によって禁止されています。湖は標高3100メートルに位置し、豊かな生態系が広がっていますが、多くの観光客の訪問により環境破壊が問題視されています。そのため、2002年には湖周辺への立ち入りが禁止され、2005年からは観光客の受け入れが再開されました。

2006年5月には、地域自治団体の職員が観光道の補修作業中に地表下から素焼きの器に入った黄金製品を発見する事件もありましたが、これは古代の黄金郷の夢の真実とはいえないものでした。

まとめ

エル・ドラードは、コロンビアのチブチャ文化をはじめ、古代文明の美術や技術の証を持つ世界でもあります。この伝説は黄金の神秘と探求心を象徴しておりますが、実現しない夢のような存在でもあります。金の国に対する人々の憧れは、今なお世界中で語り継がれています。

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