エル・ペルー

エル・ペルー遺跡の概要

エル・ペルー（El Perú）は、グアテマラのペテン県北西部に位置する古代マヤの遺跡であり、古代の名前は「ワカ」（Waka'）と考えられています。この歴史的遺跡は、ティカルから約72キロメートル西にあり、重要な歴史的背景を持つ二大国、ティカルとカラクムルとの複雑な関係が特徴です。

地理的特徴と遺物

エル・ペルーは、高さ約100メートルの断崖の上に位置し、周囲にはウスマシンタ川の支流、サン・ペドロ川が流れています。この遺跡は、古代のカカオや織物の交易路の要所とされており、重要な商業拠点でもありました。遺跡には900以上の建造物が存在し、40以上の石碑と祭壇も点在しています。

しかし、1970年代には略奪が進んだため、訪れた考古学者イアン・グレアムが見た時には、多くの遺物が壊れ、散乱していました。盗難にあった石碑などは、アメリカ、メキシコ、ヨーロッパのいくつかの博物館に所蔵されています。

歴史の流れ

エル・ペルーの定住が始まったのは、形成期後期の紀元前300年から200年頃であり、古典期前期には急速な発展を遂げました。特に378年には、テオティワカンの将軍シヤフ・カックがエル・ペルーを征服し、新興の王朝を樹立します。この出来事は、ティカルの征服の8日前に起こったため、シヤフ・カックが西から東へ進軍してきたと推測されています。

さらに2013年に解読された石碑44号には、564年の情報が刻まれており、王ワオーム・ウチャブ・ツィキンが556年に亡くなった父王、チャック・トック・イチャークを称えるために建てたとのことです。この時期はティカルでの石碑の建立がなかったため、特に重要な発見とみなされます。チャック・トック・イチャークの名前から、この時期エル・ペルーはティカルに従属していた可能性が高いと言えます。

古典期後期になると、エル・ペルーはウスマシンタ川の交易路を確保しようとするカラクムルにも従属するようになりました。7世紀末から8世紀初頭の支配者であるキニチ・バラムは、カラクムルからやってきたカベル女王と結婚し、女王は「将軍」として大きな権力を持ちました。2012年には、カベル女王の名前が刻まれたアラバスターの壺が彼女の墓から出土しています。

708年、ティカルはカラクムルを征服し、その10年後にはエル・ペルーもティカルの支配下に置かれます。ティカルによる攻撃の後も都市はしばらく存続しましたが、最も新しい年代の石碑は801年であり、その後他の都市からの攻撃により滅亡した可能性があります。

再発見のプロジェクト

1970年代にはイアン・グレアムがエル・ペルーを訪れ、再調査が行われました。その後、2003年以降にはセントルイス・ワシントン大学とグアテマラ・デル・バジェ大学が共同で発掘調査を進めています。これにより、エル・ペルーの歴史や文化的背景をより深く理解することが期待されています。

まとめ

エル・ペルーは古代マヤ文化の重要な遺跡であり、その歴史や建造物、さらには発見のプロジェクトを通じて、多様な側面が明らかになっています。今後の研究や発掘活動に期待が寄せられる場所です。

もう一度検索