エレキテル

エレキテルの歴史とふれあい

エレキテルは、江戸時代の博物学者である平賀源内が復元した摩擦起電器で、その名前はオランダ語の「elektriciteit」に由来しています。これは静電気を生成する装置で、源内はそのことを「ゐれきせゑりていと表記しました。この装置はオランダで発明され、当初は宮廷の見世物や医療器具として使用されていました。

日本には、1751年頃にオランダ人が江戸幕府にエレキテルを献上した文献があり、これが日本におけるエレキテルの初出とされています。その後、1765年に後藤利春の『紅毛談』において、日本におけるエレキテルの情報が広まりました。この書を読んだ平賀源内は1770年に長崎で破損したエレキテルを手に入れ、自ら復元に乗り出します。1776年には工人の弥七たちの協力を得て、江戸深川において見事に模造製作を成功させました。

エレキテルの構造は、外側が木製の箱または白木で作られ、内部にはライデン瓶（蓄電器）が組み込まれています。この装置にはハンドルが付いており、これを回すことで内部のガラスと摩擦を起こし、電気を生成します。それによって生じた電気は銅線を通じて外部に放出される仕組みです。源内はこの電気の発生原理を陰陽論や仏教の火一元論で説明したとされ、当時の科学的知識の限界が影響していたと考えられます。また、アメリカの著名な科学者フランクリンによって行われた実験の情報が源内に伝わっていた可能性も示唆されています。

その後、エレキテルは見世物としてだけでなく、医療器具としても使用されるようになりましたが、興味本位での注目が大半でした。また、大坂の蘭学者橋本宗吉が1809〜1810年に『阿蘭陀始制エレキテル究理原』を著し、エレキテルを製作したことで話題となり、感電体験を行う「百人おどし」と呼ばれる実演も行われました。しかし、寛政の改革による贅沢禁止や出版統制が導入された時期に電気に関する研究や理解は停滞し、実質的な発展は明治時代まで持ち越されることとなりました。

近年では、平賀源内が製造したエレキテルの一部は現存しており、その中の一つは1997年に国の重要文化財に指定されました。このエレキテルは東京都墨田区にある郵政博物館に収蔵されています。他にも、平賀源内の遺品館がある香川県さぬき市にも蓄電瓶がない状態のエレキテルが保存されています。

エレキテルは、日本の科学技術史における貴重な遺産であり、その存在は江戸時代の人々の好奇心や科学に対するアプローチを象徴しています。

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