エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調『新世紀』

『エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調「新世紀」』

スウェーデン出身の著名なギタリスト、イングヴェイ・ヨハン・マルムスティーンによって作曲されたこの作品は、正式名称を『エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調「新世紀」 Op.1 - Millennium -』といいます。1997年に完成した全12楽章からなるこの協奏組曲は、同氏がチェコ・フィルハーモニー管弦楽団（指揮：ヨエル・レヴィ）と共演した録音によって、マルムスティーン名義の11番目のスタジオアルバムとしてもリリースされました。

音楽的背景と構想

ロックやヘヴィメタルに傾倒し、ジミ・ヘンドリックスやリッチー・ブラックモアといったギタリストから影響を受けた若き日のマルムスティーンは、姉の影響で聴いたジェネシスをきっかけに、バロック音楽をはじめとするクラシック音楽にも深くのめり込んでいきます。ヘヴィメタルのダイナミックなリズムとクラシック音楽の美しい旋律を融合させ、特にヴァイオリニストのニコロ・パガニーニに強く影響を受けたギタープレイで、「ネオクラシカルメタル」というジャンルを確立した彼は、1992年頃からエレクトリック・ギターのための協奏曲という構想を温め始めます。

多くの「ロックとクラシック・オーケストラの共演」作品（例：ディープ・パープルとロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の共演盤、メタリカとサンフランシスコ交響楽団の『S&M』など）がバンドとオーケストラの融合を目指す中で、マルムスティーンが着想したのはあくまでエレクトリック・ギターを主体とした協奏曲でした。彼は、オーケストラの第一ヴァイオリンが担う主旋律パートをエレクトリック・ギターが演奏するという点を核に、自身の構想を発展させていきました。なお、タイトルには「エレクトリック・ギター」とありますが、本作ではアコースティックギターも使用されています。

作曲と録音

本作の作曲は1995年頃に開始されたとみられますが、本格的な制作が始まったのは1996年からでした。この時期には、当初の「協奏曲（concerto）」から全12楽章の「協奏組曲（concerto suite）」へと構成が変更されています。楽譜の読み書きができないマルムスティーンは、自身のギター演奏やハミングを、当時のバンドメンバーであったマッツ・オラウソンがシンセサイザーで再現・録音するという独特の手法で作曲を進めました。約3ヶ月間にわたるこの作業を経て制作された音源は、デイヴィッド・ローゼンタールによって楽譜に仕上げられ、作品が完成に至りました。

オーケストラパートの録音は1997年6月中旬に、ギターパートの録音は同年9月末に、いずれもチェコのプラハにあるルドルフィヌムで行われました。

世界初演とライブ盤

本作の世界初演は日本で行われました。2001年6月15日にすみだトリフォニーホール、同年6月17日にオーチャードホールにて、竹本泰蔵指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団との共演で披露されました。特に6月17日のオーチャードホール公演は録音・撮影され、翌2002年に『エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調 コンチェルト・ライヴ・イン・ジャパン・ウィズ・新日本フィルハーモニー交響楽団』としてCD、VHS、DVDといったメディアで発売されています。

アルバムのバージョン

スタジオアルバムとしては、1998年2月4日に発売された通常盤に加え、同年2月18日にはCDの素材にARTONを使用し、ジャケットデザインが異なる盤がキャニオン・クラシックスからリリースされています。

参加ミュージシャン・エンジニア

イングヴェイ・ヨハン・マルムスティーン - ギター
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 - オーケストラ
ヨエル・レヴィ - 指揮
デイヴィッド・ローゼンタール - オーケストラスコアリング、オーケストラディレクション
江崎友淑 - オーケストラ・エンジニア
クリス・タンガリーディス - ギターパート・エンジニア

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