エンゲルベルト・ドルフース

エンゲルベルト・ドルフースの生涯と政治

エンゲルベルト・ドルフース（Engelbert Dollfuß）は、1892年10月4日にオーストリアのテクシングで生まれました。彼の家族環境は貧困であり、幼少期に愛情を受けながらも困難な日々を過ごしました。1892年の生誕から幼少期、青年期を経て、彼はおよそ40歳での死を迎えるまでに、オーストリアの政治と社会に多大なる影響を及ぼしました。

青年期と教育

ドルフースは敬虔なカトリック教徒の家庭に育ち、若い頃から教育に熱心でした。1904年にはホラブルンの神学校に進学し、1913年には法学の修士号を取得。第一次世界大戦では砲兵として従軍し、戦後はウィーン大学での学業に戻り、学生団体での活動にも関与しました。この時期、ドルフースは国家主義や反ユダヤ主義思想に影響を受け、次第に政治の世界に足を踏み入れることになります。

政治活動の始まり

1922年、ドルフースは法学博士号を取得後、農務省で働き、1927年には農業議会の議長となりました。キリスト教社会党に参加し、党内での地位を確立していく中で、1928年には失業農民への給付金創設に尽力しました。これらの体験が彼の政治的信念を形成したのです。

オーストリア首相としてのドルフース

ドルフースは1932年に首相として登場します。当時のオーストリアは、世界恐慌の影響を受け、経済は困窮し、政治も不安定な状況にありました。ドルフースは、この危機に対処するため、強権的な政権運営である「オーストロファシズム」を採用しました。

議会の休止と強権支配

1933年、議会が機能しなくなった際、ドルフースは大統領ミクラスに無期限休会を進言し、議会を閉鎖します。これを契機に、彼は国内のナチスや共産党を非合法化し、反対勢力の排除を図ることで権力を強化しました。彼は特にイタリアのムッソリーニの影響を受けて、独裁体制を整備していきました。

内乱と新憲法の制定

1934年2月、社民党の蜂起が発生し、ドルフースはこれを鎮圧しました。彼は新憲法を制定し、「職業共同体」と呼ばれる仕組みを導入、実質的に政府の権限を強化します。シュタイアーやウィーン、リンツなどでの反乱を鎮圧し、彼は新しい国家体制を確立しました。

ドルフースの暗殺

1934年7月25日、ドルフースはオーストリア・ナチスの党員に暗殺されました。この事件はオーストリア国内での暴動を引き起こし、彼の死は、ナチスドイツとの緊張を一層深めることとなりました。ドルフースの暗殺後、彼の後任にはクルト・シュシュニックが就任し、オーストリア内の政治状況はさらなる変化を迎えます。

人物像と遺産

ドルフースは身長150cmという小柄な体格であったため、時にはジョークの対象となることもありましたが、彼はそのことを楽しんでいたとも言われています。また、彼は彼の亡き後オーストリアの歴史に大きな影響を与えました。彼の独裁的な政策や政治運営はオーストリアにおけるファシズムの一形態として記憶され続けています。

エンゲルベルト・ドルフースの生涯は、オーストリアの複雑な歴史の一部であり、彼の登場とその死は、当時の政治的背景や力のダイナミクスを理解する上で重要な意味を持っています。

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