エンシエロ

エンシエロ：牛追い祭りの魅力と危険

エンシエロ（スペイン語: encierro）は、スペインやラテンアメリカの村や都市で伝統的に行われる、牛追い祭りとして知られています。参加者は、闘牛場で使用される牡牛の群れの前を走るという、非常に危険でスリリングな行事です。日本語では「牛追い」と訳されることもあります。

エンシエロの特徴

エンシエロは、先頭の牛に率いられた牡牛、若牡牛、若牝牛などの群れの前を人間が走るという形式で行われます。熟練した走り手は、牛と接触せずに、できるだけ近い距離を走ることを目指します。しかし、慣れない参加者が転倒したり、走路が混雑したりすると、非常に危険な状況に陥る可能性があります。

一般的に、エンシエロは闘牛祭りの期間中、毎朝市街地のルートで行われます。エンシエロで使用された牛のうち、6頭は午後の闘牛に登場します。自治体によっては、参加者の年齢制限が設けられている場合があります。

歴史

エンシエロの起源は、1215年にスペインのクエジャルで行われた、牧童たちが牧場から村まで牛を走らせたことに遡るとされています。当初は、牛を市場まで移動させるための手段でしたが、次第に競争的な要素が加わり、若者たちが牛の前を走ることを競うようになりました。この習慣は人気を博し、スペインの都市部を中心に広まっていきました。

フランコ政権下ではエンシエロが禁止されましたが、民政移管後に再び人気を取り戻し、1982年には禁止令が廃止されました。

パンプローナのエンシエロ

スペインのパンプローナで行われるサン・フェルミン祭のエンシエロは、世界的に最も有名です。この行事は、7月7日から7月14日の毎朝8時に開催され、スペインの国営放送でも中継されます。

参加者には、18歳以上であること、牛と同じ方向に走ること、牛を挑発しないこと、飲酒状態で参加しないことなどの規則が定められています。ルートには、参加者が避難できるように二重の柵が設置されています。

エンシエロの開始前には、参加者は聖フェルミンの像に向かって讃美歌を歌い、安全を祈願します。午前8時になると、花火が打ち上げられ、囲い場が開かれて牛が走り出します。スタート地点から闘牛場までの826メートルのコースを、平均4分間で駆け抜けます。

負傷と衛生管理

エンシエロでは、毎年多くの負傷者が出ています。主な原因は転倒による打撲ですが、牛に角で突かれると重傷を負う危険性もあります。負傷者の治療のため、ルート沿いには救護所が設けられ、医療スタッフが待機しています。

メディアへの登場

パンプローナのエンシエロは、文学作品や映画など、様々なメディアで取り上げられています。アーネスト・ヘミングウェイの小説『日はまた昇る』によって、世界的に知られるようになりました。

パンプローナ以外の都市

エンシエロは、スペインやポルトガルの多くの町や村で行われているほか、メキシコやペルー、アメリカ、フランスなど、世界各地でも開催されています。

行事への批判

多くのアニマル・ライツ団体は、エンシエロにおける動物虐待を批判しています。PETA（動物の倫理的扱いを求める人々の会）は、抗議活動として「ランニング・オブ・ザ・ヌーデス」を実施しています。

まとめ

エンシエロは、危険を伴う一方で、参加者に強い興奮と達成感を与える伝統的な祭りです。しかし、動物愛護の観点からは、その是非について議論が続いています。参加を検討する際には、十分な情報収集と準備を行い、安全に配慮することが重要です。

エンシエロは、スペイン文化の重要な一部であり、その歴史と伝統は深く根付いています。祭りの背後にある文化的な意味合いを理解することは、エンシエロをより深く理解することにつながるでしょう。

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