エンドゲーム・スタディ

エンドゲームスタディとは

エンドゲームスタディ、または単にスタディとは、チェスにおける一種のパズルです。実戦の局面を模倣して作られた、人工的な局面が提示されます。解答者は、その局面において、特定の手順を踏むことで、一方のプレイヤー（通常は白）が勝利、または引き分けを達成するための手順を導き出すことが求められます。

スタディは、チェス・プロブレムと似た側面を持ちます。どちらも、与えられた局面に対する具体的な課題を解決することを目的としています。しかし、プロブレムが高度に人工的な局面を使用することが多いのに対し、スタディは実際の対局で出現する可能性のある局面を提示する傾向があります。また、スタディは、その美しさや複雑さ、実戦への応用可能性などが評価される芸術作品としての側面も持ち合わせています。

スタディの特徴

スタディには、優れた作品（完全作）としての条件が存在します。その一つとして、解答が唯一でなければならないという点が挙げられます。これは、与えられた局面に対して、白が勝利または引き分けを達成するための正しい手順が、ただ一つ存在することを意味します。この条件については、一部で議論もあります。例えば、正解手順において、白の手が常に一つに限定されるべきだと主張する人もいれば、些細な非限定手順（ナイトの動きが複数選択可能な場合など）は許容されると考える人もいます。

スタディの分類には、さまざまな方法が試みられてきました。その中でも、GBRコードと呼ばれる分類コードが一般的に用いられています。

歴史

スタディの歴史は、現代のチェスのルールが確立される以前に遡ります。9世紀の手稿本にはシャトランジ（チェスの前身）のスタディが見られ、15世紀後半から16世紀前半にかけての初期のチェスの文献にもスタディが掲載されています。ただし、これらの初期のスタディには、実戦を模倣するために、解答には無関係な飾り駒が含まれていることが多く、現代のスタディとは異なる特徴を持っています。

これらの局面は、かつては「subtelties」など、さまざまな名前で呼ばれていましたが、1851年にヨセフ・クリングとベルンハルト・ホルヴィッツが出版した『Chess Studies』によって、初めて「スタディ」という名称が用いられました。この著作は、現代のエンドゲームスタディの先駆けとみなされています。その後、19世紀後半には、A.A.トロイツキーやアンリ・リンクなどの作曲家によって、スタディは芸術の域にまで高められました。

多くのスタディの作曲家は、実戦のプレイヤーとしてはあまり有名ではありませんが、スタディの分野では非常に著名な人物として知られています。しかし、エマーヌエール・ラスカー、リカルド・レチ、ヤン・ティマンなど、実戦と作曲の両方で活躍した人物も存在します。

例題

以下に、リカルド・レチによる有名なスタディの例を示します。


局面:
白: キング(g6), [ポーン]
黒: キング(b7), [ポーン]

条件: 白先手、引き分け

一見すると、白が引き分けに持ち込むことは不可能に見えます。白のキングが黒のポーンを追っても、すぐに逃げられてしまいます。また、白のポーンを昇格させようとしても、すぐに黒のキングに取られてしまいます。

しかし、白のキングは、黒のポーンと白のポーンの両方に近づくように移動することで、引き分けを実現できます。

解答手順:
1. Kg7! h4
(1... Kb6としても 2. Kf6! h4 3. Ke5! と同じ手順)
2. Kf6! Kb6
(2...h3 なら 3.Ke6で白ポーンが昇格できる)
3. Ke5!

3...Kxc6とすると、4.Kf4で黒ポーンが取られることが確定し、引き分けとなります。また、3...h3とすると、4. Kd6で白ポーンが昇格し、引き分けとなります。

参考文献

Irving Chernev, 200 Brilliant Endgames
John Beasley and Timothy Whitworth, Endgame Magic
Flemish miniatures. 123 chess endgame studies
360 Brilliant and Instructive End Games, by A. A. Troitzky
A. J. Roycroft, Test Tube Chess

これらの書籍は、エンドゲームスタディを深く理解する上で役立ちます。特に、トロイツキーの著作は、古典的なスタディの傑作として知られています。

関連事項

チェス・プロブレム
詰将棋
詰碁

外部リンク

* チェス・スタディ

エンドゲームスタディは、チェスの戦略や戦術を学ぶ上で非常に有益な教材です。パズルのように楽しむだけでなく、実戦で役立つ思考力を養うことができるでしょう。

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