エンリコ・フェルミ原子力発電所 (イタリア)

エンリコ・フェルミ原子力発電所

エンリコ・フェルミ原子力発電所は、イタリア北東部のピエモンテ州ヴェルチェッリ県トリノに位置していた原子力発電所です。地元では、ベルチェッレス・トリノ原子力発電所とも呼ばれていました。ポー川のほとりに建設されたこの発電所は、イタリアの原子力発電の歴史において重要な役割を果たしました。

発電所の概要

エンリコ・フェルミ原子力発電所は、260MWの加圧水型原子炉を1基備えていました。この原子炉は、1964年から1990年までの期間、電力供給に貢献しました。しかし、1987年11月に実施されたイタリアの原子力に関する国民投票の結果、原子力発電所の閉鎖が決定され、同発電所も1990年にその役割を終えることとなりました。

原子炉

発電所の中心施設である原子炉は、加圧水型原子炉（PWR）という形式が採用されていました。加圧水型原子炉は、冷却材として加圧された水を使用し、核分裂反応によって発生した熱を蒸気に変換し、タービンを回して発電する仕組みです。この原子炉は、比較的安定した運転が可能なことで知られており、当時のイタリアの電力需要を支えていました。

近隣施設

発電所の近隣には、実験的な濃縮工場であるEUREXが存在していました。この工場は、原子力燃料の濃縮を行う施設でしたが、1984年に閉鎖されています。EUREXの閉鎖は、イタリアの原子力政策の変化を象徴する出来事の一つであり、エンリコ・フェルミ原子力発電所の閉鎖へとつながる伏線とも言えるでしょう。

原子力発電所の閉鎖

1987年の国民投票は、イタリアの原子力発電政策における大きな転換点となりました。この投票の結果、原子力発電所の新設が禁止され、既存の発電所も段階的に閉鎖されることが決定しました。エンリコ・フェルミ原子力発電所もその例外ではなく、1990年に運転を停止し、その歴史に幕を下ろしました。発電所の閉鎖は、イタリアにおける原子力発電の将来に対する国民の懸念と、再生可能エネルギーへのシフトの始まりを示すものでした。

発電所の歴史的意義

エンリコ・フェルミ原子力発電所は、イタリアにおける原子力発電の黎明期を代表する施設でした。その建設と運用は、当時の技術的な進歩を示すものであり、また、その閉鎖は、原子力発電に対する国民の意識の変化を反映しています。発電所の跡地は、現在では、イタリアの原子力政策の歴史を語る上で重要な場所となっています。

関連情報

エンリコ・フェルミ: 発電所の名前の由来となったイタリア出身の物理学者。核物理学の分野で大きな業績を残し、ノーベル物理学賞を受賞しています。
Enrico Fermi Nuclear Generating Station: アメリカ合衆国ミシガン州にある同名の原子力発電所。こちらは現在も稼働しています。

外部リンク

* Nuclear power in Italy at the WNA site.

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