ヴェルチェッリ県

ヴェルチェッリ県（Provincia di Vercelli）

イタリア共和国ピエモンテ州の北東部に位置するヴェルチェッリ県は、その県都をヴェルチェッリに置いています。この地域は、イタリア国内における米生産の主要な拠点であり、特に県の南部には一面に水田が広がる景観が見られます。

地理と自然

ヴェルチェッリ県は、東側でロンバルディア州と、北西側でヴァッレ・ダオスタ州とそれぞれ境界を接しています。地理的な特徴として非常にユニークなのは、西側に位置するビエッラ県を南、東、北の三方向から取り囲むような形状をしている点です。これは、1992年にビエッラ県がヴェルチェッリ県から分割されて成立したことによるものです。この独特な形のため、県の北部と南部は狭い回廊状の地帯によって結ばれており、場所によっては隣接するロンバルディア州パヴィーア県の領域が深く入り込んでいる箇所も存在します。

県域の地形は大きく二つに分けられます。一つは、県都ヴェルチェッリ周辺に広がる南部の平野部です。ここは豊富な水を利用した水田地帯となっており、米作が盛んです。もう一つは、イタリアアルプスのモンテ・ローザから流れ出るセージア川の上流にあたる北部の山岳地帯で、「ヴァルセージア」として知られています。この北部地域は、自然景観に恵まれ、セージア川はリバースポーツに適した流れとして知られています。

県都ヴェルチェッリは県の南東寄りに位置しており、州都トリノからは東北東へ約64km、ミラノからは西南西へ約62kmの距離にあります。その他、ノヴァーラ、ビエッラ、アレッサンドリアといった周辺の主要都市とも比較的近い位置関係にあります。

行政と主要都市

ヴェルチェッリ県には、2021年1月1日現在で82のコムーネ（市町村）が属しています。主要な都市としては、県都であるヴェルチェッリをはじめ、ボルゴセージア、サンティア、ガッティナーラ、トリノ（トリノ・ディ・ヴェルチェッリ）、クレシェンティーノ、ヴァラッロなどがあります。

近年、行政の効率化などを目的としたコムーネの統廃合もいくつか行われています。2018年にはリーマ・サン・ジュゼッペとリマスコが合併してアルト・セルメンツァが、ブレイアとチェッリオが合併してチェッリオ・コン・ブレイアが発足しました。また、ヴァラッロはサッビアを編入しました。さらに、2019年にはアラーニャ・ヴァルセージアがリーヴァ・ヴァルドッビアを編入するなど、行政区画に変更が見られます。

文化・観光

ヴェルチェッリ県の観光の中心地は、北部のヴァルセージア（セージア渓谷）です。ここには、ユネスコの世界遺産にも登録されている「ピエモンテ州とロンバルディア州のサクリ・モンティ」の一部であるヴァラッロ・セージアのサクロ・モンテがあります。ヴァラッロにあるこの聖なる山は、ルネサンス期からバロック期にかけて建設された礼拝堂群で構成されており、信仰の対象であると同時に芸術的にも重要な価値を持っています。

ヴァルセージア地域では、セージア川でのカヌーやラフティングといったリバースポーツが盛んに行われています。また、メーラやアラーニャ・ヴァルセージアなど、冬期にはスキーを楽しむことができるリゾート地も点在しています。

スポーツ

サッカーも盛んで、ヴェルチェッリを本拠地とするFCプロ・ヴェルチェッリ1892は、かつてはイタリアサッカーリーグで多くの優勝を経験した歴史あるクラブです。

交通

ヴェルチェッリ県は、北イタリアの交通網において重要な結節点の一つとなっています。高速道路としては、東西を結ぶ主要幹線であるアウトストラーダ A4（ミラノ＝トリノ線）と、湖水地方とジェノヴァ方面を結ぶアウトストラーダ A26が県内を通過しています。さらに、サンティアでA4と接続する支線が南北に延びており、北へはアウトストラーダ A5（イヴレーア方面）へ、南へはA26（ストロッピアーナ）へと連絡しています。

鉄道網も比較的発達しており、トリノ＝ミラノ線が県内を東西に横断し、主要都市を結んでいます。ヴェルチェッリ駅やサンティア駅は、パヴィーア、カザーレ・モンフェッラート、ビエッラ、アローナなど、周辺都市を結ぶ複数の路線が乗り入れるターミナル駅となっています。県北部のヴァラッロへは、ノヴァーラからの路線が通じています。

著名な人物

ヴェルチェッリ県とその周辺地域は、多くの著名な人物を輩出しています。ルネサンス期の画家ガウデンツィオ・フェッラーリ（ヴァルドゥッジャ生まれ）やソドマ（ヴェルチェッリ生まれ）、18-19世紀のヴァイオリニスト、ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティ（フォンタネット・ポー生まれ）、19世紀の電気技術者ガリレオ・フェラリス（リヴォルノ・フェッラーリス生まれ）などが挙げられます。また、20世紀初頭に自動車メーカー「ランチア」を設立したヴィンチェンツォ・ランチャはフォベッロの出身です。歴史上の人物としては、4世紀の聖人であるヴェルチェッリのエウセビウス司教もこの地にゆかりがあります。

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