エーゴセクシュアル

エーゴセクシュアルとは

エーゴセクシュアル（aegosexuality）とは、性的興奮を抱くことや、性的コンテンツ、自慰、性的な空想を楽しむ一方で、他者との性的関係を持ちたいという欲求を抱かない特異なセクシュアリティです。この概念は、自己無関与性愛とも呼ばれ、アセクシュアル・スペクトラムに位置付けられています。自分の欲望と性的経験を切り離すことに特徴があり、自己が関与しない性を楽しむことが特徴的です。同じように恋愛の側面を持つものとして、エーゴロマンティック（aegoromanticism）という概念も存在します。

歴史と語源

エーゴセクシュアルを指すこの用語は、性科学者のアンソニー・ボガートが考案しました。彼は「当人の自己／アイデンティティ（auto）のない（choris）セックス」という意味を持つオートコーリスセクシュアル（autochorissexualism）という用語を作り出しました。ただし、この用語は学術的なパラフィリアの分類に用いられるため、当事者が自分を指す際にはエーゴセクシュアルが一般的に受け入れられています。

研究と発見

エーゴセクシュアルについての研究は、アセクシュアルな存在の多様性を示すだけでなく、性的空想と自己アイデンティティの関係の複雑さを浮き彫りにしています。調査によると、エーゴセクシュアルの人々の中には、性的空想を持つことから「自分はアセクシュアルではない」と感じることもありますが、それでも自らのアイデンティティとしてアセクシュアルを保つ人々もいます。これは、性的空想がアイデンティティとは別の経験であるため、矛盾を感じないからです。

さらに、エーゴセクシュアルの人の中には、自身の性的嗜好がフィクションに限定されることを示すために、「フィクトセクシュアル」と自称する人もいます。日本のフィクトセクシュアルに関する研究では、松浦優による分析が行われ、エーゴセクシュアル的な視点を持つ人々が、性的創作物が実際の人間同士の性愛に比べると副次的な存在に過ぎないという認識に対して批判する様子が観察されました。これは、対人性愛中心主義が強い社会において、こうした立場が周縁化されることに対する反発でもあります。

エーゴセクシュアルの意義

エーゴセクシュアルは、セクシュアリティの理解を深めるための重要な概念であると言えます。性的な興味や空想を持ちながらも、他者との性的な関係を求めないことは、セクシュアリティの多様性を示しており、従来の恋愛観や性的認識を問い直すきっかけとなります。恋愛伴侶規範や対人性愛中心主義を見直すことは、より広範な人々が自らのアイデンティティを認識し、尊重される社会を築くための糸口になるでしょう。こうした研究は、性的空想やアイデンティティの関係が多様であることを再確認させ、セクシュアリティを理解する新たな視点を提供しています。

以上のように、エーゴセクシュアルは、単に性的関係の不在を示すものではなく、個々のアイデンティティや社会的構造への批判を含んだ深い意味を持っています。

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