エーバーハルト (フランケン公)

フランケン公エーバーハルト

フランケン公エーバーハルト（Eberhard von Franken, 885年頃 - 939年10月2日）は、中世ドイツの重要な貴族であり、コンラディン家の出身です。彼は911年から939年までフランケン大公として、当時の東フランク王国（後のドイツ）において重要な役割を果たしました。エーバーハルトの生涯は、当時の政治的駆け引きと権力闘争が複雑に絡み合ったものでした。

生い立ちと即位

エーバーハルトは、ラーンガウ伯コンラート（大コンラート）と、東フランク王国の王アルヌルフの娘グリスムートとの間に生まれました。彼は、東フランク王コンラート1世（小コンラート）の弟であり、ラーンガウ伯オットーの兄でもあります。彼の家系は、当時の東フランク王国において大きな影響力を持っていました。

911年に兄コンラート1世が東フランク王に即位すると、エーバーハルトは兄を補佐し、特にバイエルン大公アルヌルフやザクセン大公ハインリヒとの紛争において重要な役割を果たしました。彼は兄の信頼を得て、政治的な手腕を発揮しました。

東フランク王ハインリヒ1世との関係

918年、コンラート1世は亡くなる前に、全大公をフォルヒハイムに呼びましたが、ザクセン大公ハインリヒは現れませんでした。ヴィドゥキント・フォン・コルヴァイの記録によれば、コンラートは死の床でハインリヒに帝国権標を渡すよう、弟エーバーハルトに告げたとされています。919年5月、エーバーハルトはフリッツラーの帝国会議においてハインリヒに帝国権標を渡し、ハインリヒがザクセン人として初めて東フランク王となりました。しかし、このヴィドゥキントの記述は、リウドルフィング家の言い伝えに基づいているとする歴史家も多く、その信憑性については議論があります。

エーバーハルトと新国王ハインリヒ1世との関係は当初、良好でした。926年から928年の間、ハインリヒ1世はエーバーハルトにロートリンゲン大公位を譲り渡したとされており、これはハインリヒがエーバーハルトを深く信頼していた証と考えられています。エーバーハルトの統治下において、ロートリンゲンは比較的安定した時期を過ごしました。また、934年にはハインリヒ1世によりロートリンゲン大公ギゼルベルトや司教らとともに西フランク王ラウールのもとに派遣されています。

オットー1世との対立と最期

ハインリヒ1世の死後、エーバーハルトはハインリヒの後継者であるオットー1世と対立するようになります。937年、エーバーハルトはザクセン大公領とフランケン大公領の境界にあるペッケルスハイムのヘルメルン城を包囲しました。この城代のブルニンクはザクセン人であり、エーバーハルトとの封建関係を拒否したことが原因でした。オットー1世はマグデブルクの宮廷に包囲に参加した者すべてを呼び、エーバーハルトは罰金を支払い、部下たちは屈辱的な罰を受けることになりました。

この事件以降、エーバーハルトはオットー1世に敵対するようになり、938年にはオットーの異母兄タンクマールやビルング家のヴィヒマンと共に反乱を起こし、オットーの弟ハインリヒを捕虜としました。しかし、タンクマールが938年に殺害されると、エーバーハルトはハインリヒを釈放して降伏し、一時的に幽閉されたものの、まもなく元の地位に戻されました。その後、エーバーハルトは王弟ハインリヒおよびロートリンゲン大公ギゼルベルトと共に再び反乱を起こします。

939年10月2日、エーバーハルトはアンデルナハの戦いにおいてコンラート・クルツボルトとヴェッテラウ伯ウドー（エーバーハルトの従兄弟）に敗れ、戦死しました。ウドー自身がエーバーハルトを殺害したと考えられています。ロートリンゲン大公ギゼルベルトは逃げる際にライン川で溺死しました。エーバーハルトの死は、当時の東フランク王国の政治情勢に大きな影響を与えました。

参考文献

Widukind von Corvey, Die Sachsengeschichte des Widukind von Corvey
Gerd Althoff, Die Ottonen. Königsherrschaft ohne Staat.
Helmut Beumann, Die Ottonen
Hagen Keller, Die Ottonen
Ernst Ludwig Dümmler, Eberhard von Franken
Hans Jürgen Rieckenberg, Eberhard (Franken)
Ernst Karpf, Eberhard, Herzog von Franken
K.J. Leyser, Medieval Germany and Its Neighbours 900-1250
瀬原義生 『ドイツ中世前期の歴史像』
コルヴァイのヴィドゥキント、三佐川亮宏 訳 『ザクセン人の事績』

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