エールフランス178便墜落事故

エールフランス178便墜落事故は、1953年9月1日にフランスで発生した痛ましい航空事故です。

事故の概要

この日、フランスの首都パリにあるオルリー空港を出発したエールフランスのロッキード製プロペラ旅客機コンステレーションが、地中海沿岸の観光都市ニースへ向かうフライトの最終段階で、フランス南東部アルプ＝ド＝オート＝プロヴァンス県のバルスロネット近郊に位置するアルプス山脈の一角に墜落しました。

航路情報

事故機は、パリからニースへの飛行を終えた後も、ベイルート、バグダッド、カラチ、コルカタといった各地を経由し、最終的に当時のサイゴン（現在のベトナム、ホーチミン市）へ向かう長距離国際線の途中でした。

事故発生の状況と原因

公式な事故原因は特定されていませんが、墜落に至る状況から、操縦上の判断ミスが強く疑われています。

事故は、機体がニース空港へのファイナルアプローチ（最終進入）に入ろうとしていた時に発生しました。アルプスの山岳地帯を飛行中、機長は管制官に対し、墜落のおよそ5分前、「万事OK」であり、「予定通りニースに着陸する」との交信を行っています。しかし、その直後に機体は標高の高い山頂付近に激突し、大破しました。

事故後、報道などで有力視された説は、機長がアルプス山脈の一部であるモン・スニ山系を既に通過したと誤認し、本来より早い段階で降下を開始したというものです。地形に関するこの誤った認識が、結果として機体を山頂に衝突させるという航法上の決定的なミスを引き起こした可能性が指摘されました。

犠牲者

この事故により、搭乗していた全ての乗客と乗員が命を落としました。犠牲者は、乗客33名と乗員9名の合計42名に上ります。

この事故の悲劇的な犠牲者の中には、当時世界的に著名なヴァイオリニストとして活躍していたジャック・ティボー氏が含まれていました。彼の死去は、国際的な音楽界にも大きな衝撃を与えました。

事故後の経過

墜落後、事故機は激しく炎上し、その炎は3時間以上にわたって燃え続けたと記録されています。これにより、機体の損傷は甚大となり、事故原因の究明を一層困難なものとしました。

近隣での事故

興味深いことに、エールフランス178便の墜落現場から西へわずか1キロメートルほどしか離れていない地点では、およそ60年後の2015年3月24日、ジャーマンウイングス9525便墜落事故が発生しています。時を隔てて二つの大規模な航空事故が、アルプスの同じ山域で発生したという事実は、この地を記憶にとどめる要因の一つとなっています。

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