オアシス (2002年の映画)

映画『オアシス』の紹介

『オアシス』（原題：오아시스）は、2002年に公開された韓国映画で、イ・チャンドン監督が手掛け、ソル・ギョングが主演を務めています。本作品は、社会に適応できない青年と体に障がいを持つ女性との出会いを通して、彼らの特異で純粋な恋愛を描いた物語です。また、この映画は、周囲の人々からの偏見と闘いながら、互いに成長していく様子も描写されています。

あらすじ

物語は、29歳の青年ホン・ジョンドゥが、2年6か月の刑期を終えて出所するところから始まります。彼は、ひき逃げによって過失致死に問われた結果、服役していました。出所当初、彼は母親の服を買うために家に帰る計画を立てますが、実家はすでに引っ越してしまい、連絡先すらわからない状態に。最初の数日間は無銭飲食をして警察に捕まり、弟であるジョンセに迎えに来てもらいますが、家族からの暖かい受け入れは得られません。

その後、ジョンドゥはひき逃げの被害者の家を訪ねるものの、その家族からの冷たい反応を受け、さらに孤独感を募らせます。そんな中、彼は脳性麻痺を抱える女性ハン・コンジュに出会います。彼女に果物を持って訪ねたことから、次第にコンジュへの関心が高まっていきます。

ジョンドゥは、コンジュとの交流を続け、彼女に対する好意を持ち続ける一方で、周囲からは理解されない複雑な状況に悩まされます。コンジュは、家族によって障がい者向けの住宅に住まわされるが、実際には古い家で放置されていることが明らかになります。この不条理な状況に対して、ジョンドゥは何度もコンジュの元を訪れ、彼女との絆を深めていきます。

作品の評価

『オアシス』は、その独特なテーマと深い愛情描写から、2002年に韓国MBC映画賞で多くの賞を受賞しました。最優秀作品賞や監督賞、主演男優賞などを含む6つの賞を受賞し、同年のヴェネツィア国際映画祭でも注目を浴び、監督賞や新人演技賞を獲得するなど、国際的にも評価されています。

製作背景とエピソード

この映画では、精神的な部分や社会的障害に対する扱いが非常にリアルに描かれており、登場人物たちの人間ドラマは観る者に深い感動を与えます。また、特に印象的なシーンとして、出所したジョンドゥが豆腐をかじる場面がありますが、これは韓国の伝統的な風習に基づいています。彼が誰にも迎えに来てもらえなかったため、自ら豆腐を購入して食べ、その意味を象徴的に表現しています。

ドライブ中に渋滞に巻き込まれたジョンドゥが、コンジュを抱き上げて踊るシーンも映画のハイライトです。この撮影は、ソウル市内の清渓川高架道路で行われ、監督のイ・チャンドンの独自の演出によって実現しました。この道路は現在取り壊され、親水施設となっていますが、その背景にも映画の制作に関わった多くの人々の思いが込められています。

『オアシス』は、愛と理解の重要性を考えさせられる作品であり、その感動的で切ない物語は、単なる恋愛映画以上の深いメッセージを持っています。

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