オィット・タナック

オィット・タナック：WRCチャンピオンの軌跡

オィット・タナック (Ott Tänak, 1987年10月15日生) は、エストニア出身の世界的なラリードライバーであり、2019年世界ラリー選手権(WRC)でドライバーズチャンピオンに輝きました。日本のメディアでは「オット・タナク」と表記されることもありますが、近年はエストニア語の発音に則った「オィット・タナック」が一般的になりつつあります。

ジュニア時代からWRCへの挑戦

ラリードライバーである父親の影響を受け、タナックは2004年からジュニアラリー競技を始めます。卓越した才能を発揮し、2008年と2009年にはエストニアラリー選手権のN4+S2000クラスで2連覇を達成。その活躍は、エストニアの英雄、マルコ・マルティンの目に留まり、Mスポーツへの推薦へと繋がります。

2010年には、ピレリ・スタードライバーという若手育成プログラムに参加。三菱ランサーエボリューションXを駆り、PWRCで2勝を挙げました。翌2011年にはSWRCに参戦し3勝を収め、チャンピオン候補として注目を集めますが、最終戦でのマシントラブルにより2位に終わります。しかし、WRC最終戦ラリーGBでは、WRC初参戦を果たし6位入賞という好成績を残しました。

挫折と成長、そしてMスポーツへの復帰

2012年にはMスポーツ・フォードからWRCにフル参戦しますが、安定性に欠け、シーズン終了後にチームを離れます。その後、地元エストニアのラリーに参戦するなど、苦しい時期を過ごしますが、2014年にはDMACKと契約しWRC2に参戦。そして、2015年にはミッコ・ヒルボネンの後任としてMスポーツに復帰し、再びWRCの舞台に戻ってきます。

2016年にはDMACK・ワールドラリーチームでフル参戦。ラリー・ポーランドでは優勝目前でパンクに見舞われ2位に終わりますが、その健闘は高く評価され、「WRCドライバー・オブ・ザ・イヤー」に選出されました。翌2017年、再びMスポーツに戻ると、WRC初優勝を含む2勝を挙げ、年間ランキング3位を獲得。Mスポーツのチームタイトル獲得にも大きく貢献しました。

トヨタ、ヒュンダイ、そしてMスポーツへ

2018年には、トヨタへ移籍。開幕戦から圧倒的な速さを見せつけ、アルゼンチン、フィンランド、トルコで優勝を飾ります。年間最多ステージウィンを記録するも、マシントラブルやミスが響き、ドライバーズタイトルを逃します。しかし、トヨタはマニュファクチャラーズタイトルを獲得しました。

2019年には、念願のドライバーズチャンピオンの座に就きます。しかし、トヨタとの契約延長交渉が難航し、ヒュンダイへ移籍。2020年には地元エストニアで移籍後初勝利を挙げます。2021年もヒュンダイから参戦しますが、マシントラブルやアクシデントに苦しみ、ランキング5位に終わります。

2022年には、ヒュンダイから突如離脱。そして、古巣Mスポーツ・フォードに電撃復帰。2023年にはレッドブル・アスリート入りを果たします。Mスポーツではスウェーデンとチリで優勝を飾りましたが、再びヒュンダイへ復帰しました。

2024年シーズンとその後

2024年シーズンはヒュンダイに復帰し、ヌービルと共にダブルエース体制を担いました。開幕当初は苦戦しましたが、その後は復調し、ポルトガルとセントラル・ヨーロピアン・ラリーで優勝。最終戦ラリー・ジャパンでは優勝目前でクラッシュというアクシデントに見舞われ、チャンピオン獲得はなりませんでした。

数々のエピソード

タナックのキャリアには、数々のドラマチックなエピソードが詰まっています。メキシコでの水没事故（「タイタナック」事件）、ポルトガルでの山火事への消火活動への参加など、数々の困難を乗り越えてきました。また、師であるマルコ・マルティンと共にエストニアを拠点とする企業「レッドグレイ」を設立。勝田貴元選手とは公私共に深い関係を築き、師弟関係を超えた強い絆で結ばれています。

常に進化を続けるドライバー

常にトップレベルで戦い続けるオィット・タナック。その卓越したドライビングテクニック、類まれな精神力、そして人間性、全てが彼の魅力です。これからも彼の活躍から目が離せません。

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