Mスポーツ

Mスポーツ：モータースポーツの総合企業

Mスポーツは、イギリス・カンブリア州コッカーマスに拠点を置くモータースポーツ企業です。世界ラリー選手権（WRC）へのワークス参戦で知られていますが、その活動は多岐に渡ります。競技車両の製造・販売・整備から、ラリーチームの運営、そして若手ドライバーの育成まで、モータースポーツに関わる様々な事業を展開しています。

WRC参戦の歴史：栄光と苦闘

Mスポーツの前身となるマルコム・ウィルソン・モータースポーツ（MWM）は、1979年、ラリードライバーのマルコム・ウィルソンによって設立されました。当初は個人チームでしたが、次第に規模を拡大し、他の選手権出場チームのサポートも請け負うようになりました。

ウィルソンはフォードと深い関係にあり、フォードのエスコートRSコスワースでイギリスラリー選手権を制覇するなど、ドライバーとしても活躍しました。1996年末、フォードはWRCワークス活動の体制を見直し、それをMWMに委託。1997年、MWMはMスポーツと改称し、WRCに本格参戦を開始します。

初期は、カルロス・サインツやユハ・カンクネン、コリン・マクレーといったトップドライバーを擁し、数々の勝利を収めました。2000年代前半には、プジョーとの激しいタイトル争いを繰り広げ、幾度となく勝利の栄光を掴みますが、マニュファクチャラーズ選手権のタイトル獲得はなりませんでした。

2006年には、マーカス・グロンホルムとミッコ・ヒルボネンを擁し、フォードにとって1979年以来となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得。翌2007年も連覇を達成しました。その後も、ヤリ-マティ・ラトバラらトップドライバーを起用し、シトロエンのセバスチャン・ローブと激しく競い合いました。

2012年、フォード・ヨーロッパがワークス活動を終了したことを受け、Mスポーツは独立採算チームとしてWRC参戦を継続。メーカーからの直接的な支援を受けないプライベーターチームとして、2017年にはセバスチャン・オジェを獲得。オジェはチームに5年ぶりの勝利をもたらし、ドライバーズタイトルとマニュファクチャラーズタイトルの獲得に貢献しました。この快挙は、プライベーターチームとしてはWRC史上初のことでした。

2018年以降も、オジェを擁してタイトル争いを展開しますが、資金面での制約やドライバーの流出など、様々な困難に直面しながらも、現在もWRCに参戦し続けています。近年は若手ドライバーの育成にも力を入れており、チームの未来を担う人材を育成することに注力しています。

多角的な事業展開

MスポーツはWRC参戦以外にも、様々な事業を展開しています。プライベーター向けのカスタマービジネスでは、ラリーカーの販売、メンテナンス、アフターパーツの供給などを行い、顧客をサポートしています。フォード・フィエスタを中心に、様々なクラスのラリーカーを提供しています。

また、若手育成にも積極的で、ジュニア世界ラリー選手権（JWRC）のプロモーターも務めています。JWRCでは、Mスポーツが開発・販売するフィエスタR2がワンメイクマシンとして採用されており、若手ドライバーの育成に貢献しています。

さらに、GTレースやラリーレイド、ラリークロスなどにも参戦。ベントレーとの共同開発によるGT3車両でブランパンGTシリーズやSUPER GTにも参戦していました。また、ダカールラリーへの参戦も目指しています。

近年では、自動車産業の研究開発分野にも進出。政府や自治体からの支援を受けて、テストトラックやハイテク設備を備えた評価センターを建設中です。EVレースやイギリスツーリングカー選手権にも技術パートナーとして関与するなど、その活動はますます広がりを見せています。

Mスポーツは、WRC参戦という華やかな側面だけでなく、多角的な事業展開と若手育成を通じて、モータースポーツ業界全体の発展に貢献する存在となっています。これからも、その挑戦は続いていきます。

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