オウム真理教男性信者殺害事件

オウム真理教男性信者殺害事件の概要

1989年2月10日、オウム真理教の信者による殺人事件が発生しました。この事件は教団が引き起こした一連の犯罪行為の中でも特に衝撃的なものであり、オウム真理教の内部で生じた緊迫した状況が背景にありました。

事件の被害者である男性信者は、出家後に村井秀夫が責任者を務めるコスミック・サイエンス・インスティテュート（CSI）で電気班に所属し、電気設備工事を行っていました。1988年2月には東京本部に転属となり、オウム出版の責任者である岡崎一明の元で働いていました。しかし、出版事業の営業という業務に満足できず、岡崎に対して「こういうワークで修行できるんですか？ 家に帰って修行したい」と脱退の意向を示しました。

その後、1988年9月にはオウム真理教在家信者死亡事件を目撃し、教団の信念や行動に疑問を持ち始めます。不満を岡崎に吐露すると、彼は教祖の麻原彰晃にこの報告を行いました。すると、麻原はこの信者を富士山の独房に監禁し、両手両足を拘束する命令を出しました。しかし、男性信者は脱会を決意し、その意志を強く主張します。麻原は、この脱会が過去の事件の露見に繋がり、教団にとって重大な危険であると認識し、最終的には殺害を決断します。

事件は深夜に行われました。早川紀代秀、村井秀夫、岡崎一明、新実智光、大内利裕の5名が集められ、麻原は「私を殺すという意思が変わらないならばポアするしかない」と命じました。その後、男性信者の殺害が計画されました。最初の策では目隠しをし、羽交い絞めにした上でロープで窒息死させる予定でしたが、男性信者が抵抗したため、新実が過剰に反応して首の骨を折るという形で殺害されてしまいました。

麻原はその後、遺体の処理を急がせ、「燃やす方法はないのか」と尋ね、指示を出しました。実行犯たちは遺体を焼却し、粉々にしてその敷地内にばら撒きました。このため、遺体や遺骨は一切残されることなく、完全に消失しました。事件後、麻原は殺人を正当化する教えを実行犯に説き、被害者がシロクマに転生したなどと無責任な発言をして自らの行動を正当化しました。

実行犯の中で大内を除く4人は、その後も坂本弁護士一家の殺害事件に関与することになります。このように、オウム真理教の内部での権力闘争や盲目的な信仰がいかにして悲劇を生み出したのか、今なお多くの人々に衝撃を与えています。

参考文献

• - 『オウム法廷1 下』（朝日新聞社 1998年）

関連項目

• - オウム真理教
• - オウム真理教事件
• - オウム真理教在家信者死亡事件 (1988年)
• - オウム真理教女性信者殺害事件 (1991年)
• - オウム真理教男性信者リンチ殺人事件 (1994年)

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