オオカメノキ

オオカメノキ（大亀の木）

オオカメノキ（学名：Viburnum furcatum）は、ガマズミ科ガマズミ属に分類される落葉性の低木、または小高木です。別名として「ムシカリ（虫刈）」の名でも親しまれています。

名称の由来

和名である「オオカメノキ」は、その葉の形がカメの甲羅に似ていることに由来します。一方、「ムシカリ」という別名は、葉が虫に食われやすいことにちなんで名付けられたと言われています。

分布と生育環境

オオカメノキは、日本の北海道から九州にかけて分布しており、特に寒冷な山地のブナ林や針葉樹林に自生しています。冷涼な気候を好み、自然豊かな環境で生育する姿が見られます。

特徴

オオカメノキは、落葉広葉樹の低木または小高木で、樹高は通常2〜4m程度に成長します。枝はしなやかで水平に伸び、やや斜め上に広がります。その枝ぶりは、まるでシカの角のように見えることがあります。樹皮は灰褐色で、皮目が目立つのが特徴です。一年枝は紫褐色を帯び、ほとんど無毛で、短枝もよくできます。若い樹皮には縦に連なる皮目が見られ、成長とともに筋状に変化していきます。

葉

葉は枝に対生し、卵円形で長さは7〜20cm程度です。葉の先端は尖っており、付け根はハート形にくぼんでいます。葉の縁には細かい鋸歯があり、他の類似種と比較して葉脈がシワ状に目立つのが特徴です。春に芽吹いたばかりの葉は独特のベージュ色をしており、きれいに対生した姿は春の山林でよく目立ちます。秋には紅葉し、ややくすんだ赤色から橙色へと変化します。葉が大きく丸みを帯びているため、紅葉時期にはひときわ目を引く存在です。

花

花期は4〜6月で、枝の先端から散房花序を出し、白色の小さな両性花の周りを、大きな5枚の花弁を持つ装飾花が縁取ります。装飾花は非常に美しく、5つに深く裂けており、直径は25〜35mm程度です。花序の基部に柄がなく、葉腋から直接花が出ているように見えるのも特徴の一つです。

果実

果期は9〜10月です。夏に果実をつけ、直径約8mmの楕円状の球形をしており、秋には赤色や黒色に熟して目を引きます。熟した果実は野鳥の食料となるため、冬にはほとんど残っていません。

冬芽

冬芽は裸芽で柄があり、星状毛が密生しています。花芽はほぼ球形で、頂生側芽を伴って冬芽の頂上に生え、そのかわいらしい形が目を引きます。枝の側芽はあまり発達しません。葉芽は長楕円形で柄があり、幼い葉が向き合ってくっついています。冬芽の脇にある葉痕は、倒松形や三角形で、維管束痕が3個あります。

オオカメノキは、その美しい姿から観賞用としても楽しまれています。庭木や公園樹として植栽されることもあり、四季を通じてその変化を楽しむことができます。

参考文献
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉, 2014年
西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉, 2009年
林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版, 2008年

関連項目
ガマズミ
* ガクアジサイ

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