オオグンカンドリ

オオグンカンドリ（大軍艦鳥）

オオグンカンドリ（学名：Fregata minor）は、海鳥の中でも際立った存在の一種で、カツオドリ目グンカンドリ科に属しています。この鳥は主に熱帯および亜熱帯の海域に広く分布し、日本では稀に太平洋岸に迷鳥として現れることがあります。

形態

オオグンカンドリは非常に大きな鳥で、成鳥の全長は約100cm、翼を広げると230cmに達します。しかし、体重はおよそ1.2kgと、見た目に反して軽量です。これは同じく海鳥であるアホウドリとほぼ同じサイズですが、体重はその1/3程度です。特に特徴的なのは、長くて鋭い鉤状のくちばしと、先端が尖った大きな翼です。尾羽は二つに分かれて長く伸びています。

色彩面では、オス成鳥は全身が光沢のある黒色で、喉には鮮やかな赤い喉袋があります。一方、メス成鳥は喉から胸にかけて白いため、オスメスの見分けは容易です。若鳥は淡い色合いで、頭部から胸までは白または淡褐色です。

分布

この種は全世界の熱帯および亜熱帯地域に分布し、7つの亜種に分類されます。主要な分布域は太平洋とインド洋であり、大西洋ではブラジル沖のみに限られています。グンカンドリ科の中でオオグンカンドリは最も個体数が多いとされています。日本では、本州の太平洋岸や伊豆・小笠原諸島、南西諸島で時折迷鳥として見られますが、特に南西諸島での観察例が多い傾向にあります。

生態

オオグンカンドリは小島や岩場を利用して休憩したり繁殖したりしますが、日常生活の大半は海上で飛翔し、時には陸から数百キロメートル離れた場所でも見られます。非常に優れた飛行能力を誇り、アホウドリ類のように羽ばたかずに長距離を滑空することが可能で、高速飛行や急旋回も得意です。

ただし、羽毛には油分が少なく防水性がないため、水に浮くことも泳ぐこともできません。もしも海に落ちると、ほとんどの場合は溺死してしまいます。採食の際には、水面すれすれで飛んで魚やイカなどの小動物を捕らえます。また、ウミガメの子どもや他の鳥の卵、ヒナを狙って捕食することもあります。

興味深い行動としては、水面で捕食をしている他のミズナギドリやカツオドリを巧みに追い回し、その獲物を奪う手法が挙げられます。ただし、水面での捕食が苦手であることが知られているため、相手が着水や潜水をすると、奪取を断念することが多いです。

繁殖

繁殖期には、オオグンカンドリは低木が生えた島嶼にコロニーを形成し、しばしば他のグンカンドリ類と混在して繁殖します。求愛の際、オスは赤い喉袋を風船のように膨らませてプロポーズするユニークな行動を見せます。

オオグンカンドリは巣を小枝で作り、通常1つの卵を産みます。抱卵期間は45〜55日間です。ヒナが巣立つのに約半年、さらに親元を離れるまでに約半年かかります。そのため、繁殖期間は他の海鳥の中でも特に長いです。一般的に、親鳥は2年に1度しか繁殖しませんが、巣材を巡る争いがあるため、卵やヒナが死亡することも珍しくありません。

参考文献

• - 真木広造・大西敏一『決定版 日本の野鳥590』平凡社、2000年
• - クリストファー・M・ペリンズ監修・山岸哲日本語版監修『世界鳥類事典』同朋舎、1996年

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