オオチョウザメ

オオチョウザメ：絶滅寸前の巨大魚

オオチョウザメ（学名: Huso huso、英名: Beluga）は、チョウザメ科に属する大型の遡河性魚類です。カスピ海や黒海を主な生息地とし、アドリア海にも生息が確認されています。その名前は、ロシア語で「白い」を意味する言葉に由来しており、シロイルカのベルーガとは関係ありません。

驚異的な大きさ

オオチョウザメは、その巨大な体躯で知られています。最大で体長8.6メートル、体重2,700キログラムに達したという記録も存在し、世界最大の淡水魚とされています。ただし、一般的に認められている最大記録は、1827年にボルガ川河口で捕獲された体長7.2メートル、体重1,476キログラムの個体です。

しかし、淡水魚か海水魚かの定義の曖昧性から、ピラルクやメコンオオナマズなど、他の大型魚類を最大の淡水魚とする見解もあります。オオチョウザメは生涯にわたって成長を続け、このような巨大な個体に成長するには長寿であることが必要です。近年では乱獲が進んでいるため、これほど巨大な個体は非常に稀になっています。現代では、体長142～328センチメートル、体重19～264キログラム程度の個体が一般的です。なお、メスの方がオスよりも約20％大きい傾向があります。

高級食材としてのキャビア

オオチョウザメは、高級食材として名高いキャビアの原料として知られています。ベルーガキャビアと呼ばれ、その希少性と繊細な味わいは世界中で高く評価されています。一方、オオチョウザメの身は、キャビアに比べて人気は高くありません。

乱獲により個体数が減少しているため、ベルーガキャビアはますます希少になり、その価格は高騰しています。そのため、多くの国でオオチョウザメの取引が規制されています。

絶滅の危機

国際自然保護連合（IUCN）は、2010年以降オオチョウザメを絶滅危惧種に指定しています。ベルヌ条約やワシントン条約でも保護されており、国際的な取引は厳しく制限されています。特に、地中海の個体群は、ベルヌ条約によって強力に保護されており、殺傷は完全に禁止されています。アメリカ合衆国では、2005年以降カスピ海産のベルーガキャビアの輸入が禁止されており、その後、全てのベルーガキャビアの輸入が禁止されました。

生態と行動

オオチョウザメは、他の魚を捕食する肉食性の魚です。多くのチョウザメと同様に、産卵のために生まれた川を遡上する習性があります。そのため、海魚と分類されることもありますが、多くの研究者は川魚だと考えています。オオチョウザメの最も近縁な種はダウリアチョウザメ（Huso dauricus）です。

保全の重要性

オオチョウザメの個体数減少は、乱獲と密猟が主な原因です。キャビアの高価格と需要が、違法な取引を助長しているという問題があります。オオチョウザメの保護には、密猟の取り締まり、持続可能な漁業管理、そして人工繁殖技術の開発など、多角的な取り組みが必要です。この貴重な種を未来に残すためには、国際的な協力と意識改革が不可欠です。

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