オオマツヨイグサ

オオマツヨイグサ

オオマツヨイグサ（学名: Oenothera glazioviana）は、アカバナ科マツヨイグサ属に分類される二年草です。北米大陸を原産とし、ヨーロッパで園芸品種として改良されたと考えられています。日本には帰化植物として定着していますが、ツキミソウと誤って呼ばれることもあります。和名は、マツヨイグサよりも大型であることに由来します。

特徴

オオマツヨイグサは、二年草または短命な多年草として生育し、直立した茎は50cmから150cmほどの高さにまで成長します。茎全体には硬い毛が生えており、毛の基部は暗赤色の凸点となっています。根生葉はロゼット状に広がり、柄があり先端は丸みを帯びています。茎につく葉は柄がなく、先端が尖った狭楕円形または披針形で、長さは5cmから15cm、幅は2.5cmから4cmです。葉の縁にはまばらに鋸歯があり、葉の表面には凹凸が見られ、中央の葉脈は白色を帯びています。

花期は夏で、7月から10月にかけて開花します。直径8cmほどの黄色い花は、柄がなく子房下位です。自家受粉が可能で、夕方に開花し翌朝にはしぼみます。4枚の花弁は広倒卵形で、幅が長さよりも大きく、しぼむ際には黄色から赤橙色へと変化します。8本の雄しべと1本の雌しべを持ち、雌しべの花柱は雄しべよりも長く、先端が4つに分かれています。葯は長さ10mmから12mmで、花粉には大小があり、稔性は半分程度です。萼の下部は筒状で長さ3cmから5cm、萼片は4つで長さ2.8cmから4.5cmで2片ずつついており、開花時には外側に反り返ります。

果実は長さ2cmから3.5cmほどの狭披針状の蒴果で、赤い点があり、熟すと4つに裂けますが、裂片は強く反り返りません。種子は褐色から黄褐色で、長さ1.3mmから2mmで角張っており、表面には多くの皺があります。染色体数は2n=14です。

起源と分布

オオマツヨイグサは、オランダの植物学者ユーゴー・ド・フリースの突然変異説の研究材料として知られていますが、その起源は明確ではありません。北米原産の種を基に、ヨーロッパで作出された園芸植物であると考えられています。雑種起源であり、ヨーロッパの庭園で生まれたという説もあります。現在では、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オーストラリアなど、世界中に広く分布しています。

日本には明治初期（1870年頃）に導入され、その後各地で野生化し、北海道から沖縄まで日本全土に分布しています。かつては河原や海浜に群生していましたが、近年ではアレチマツヨイグサなどに置き換わり、数を減らしており、山間部で見られることが多くなりました。開けた場所や攪乱された場所に生育することが多いです。

学名

日本では長らく Oenothera lamarckiana auct. non Ser. の学名が用いられてきましたが、原寛 (1995) は、北アメリカのマツヨイグサ属を研究した Munz (1949) の見解を紹介し、Oenothera erythrosepala (Borbás) Borbás を用いるべきだと主張しました。一方、Dietrich, Wagner, Raven (1997) は、ブラジルのリオデジャネイロを原産地として1875年に記載された学名 Oenothera glazioviana を採用し、Oenothera erythrosepala (Borbás) Borbás を含む40の学名をそのシノニム（異名）としました。Wagnerは、英文版の日本植物誌 “Flora of Japan” でもこの見解を踏襲しています。

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