オカピ野生生物保護区

オカピ野生生物保護区：絶滅危惧種が息づく森

オカピ野生生物保護区は、コンゴ民主共和国北東部のイトゥリの森に位置し、スーダンやウガンダとの国境に近い場所にあります。約14,000平方キロメートルに及ぶ広大な保護区は、イトゥリの森の約5分の1を占めており、1996年にユネスコの世界遺産に登録されました。

オカピの聖域

保護区の名前にもなっているオカピは、20世紀に発見された世界三大珍獣の一つであり、保護区は彼らの重要な生息地となっています。1996年時点の推定では、3,900頭から6,350頭のオカピが生息しているとされ、地球上に生息する全個体数の約3割から6割がこの保護区に集中していると考えられています。

エプル川沿いには、エプル保護調査センターがあり、野生のオカピの保護と研究が行われています。このセンターの歴史は、1928年にアメリカの人類学者パトリック・パットナムがキャンプを設置したことに遡ります。当初は野生のオカピを捕獲し、欧米の動物園に送ることを目的としていましたが、現在では保護区内でオカピを繁殖させ、その子孫を必要最小限の数だけ動物園に送るという方法に変わっています。センターは、オカピの保護に関する重要な調査や保全事業も数多く手掛けています。

多様な生態系と住民

保護区内には、オカピ以外にも、マルミミゾウ、チンパンジー、アフリカゴールデンキャット、コンゴクジャクなど、多くの希少な動物や絶滅危惧種が生息しています。また、ムブティ人やエフェ人といったピグミーの人々や、土着のバントゥー系の住民も暮らしており、彼らの伝統的な生活と自然との共存が保たれています。

森林は、ギルベルティオデンドロン・デウェウレイ（ムバウ）が多くを占めますが、固有種のソテツ類であるEncephalartos ituriensisも見られます。

世界遺産としての価値と危機

オカピ野生生物保護区は、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

* (10): 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。

しかし、保護区は1997年に危機遺産リストに加えられました。その理由は、焼畑農業による森林破壊、密猟、金の採掘などです。2005年には、コンゴ民主共和国東部の戦闘が保護区内にまで及び、スタッフが一時撤退せざるを得ない状況になりました。元々この地に住んでいたムブティ人やバントゥー系住民は森に敬意を抱いていましたが、難民たちにはそうした感情はなく、保護区の自然環境は深刻な脅威にさらされています。コンゴ民主共和国の国内事情から、保護政策に十分な財源を充てられないことも、問題の深刻化に拍車をかけています。

保全への取り組み

保護区では、エコツーリズムを推進することで経済的な収入を確保し、地域住民の環境保全意識を高めることを目指しています。また、密猟対策には軍も協力し、保護区内での鉱石採掘を禁止するなど、様々な対策が講じられています。

オカピ野生生物保護区は、貴重な自然遺産であると同時に、多くの課題を抱えています。国際社会の支援と、地域住民の協力によって、この保護区の豊かな自然が未来へと引き継がれることが期待されています。

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