オガデン民族解放戦線

オガデン民族解放戦線（ONLF）

オガデン民族解放戦線（Ogaden National Liberation Front、略称：ONLF）は、エチオピア東部のソマリ州に位置するオガデン地方を中心に活動を展開したイスラム系の武装組織であり、政府に反抗する立場をとっていました。構成員の多くはソマリ人でした。

概要

ONLFは1984年に設立されました。その設立母体には、エチオピアと隣国ソマリアの間で1977年から1978年にかけて戦われたオガデン戦争の際にエチオピア軍と戦った敗残兵や民兵が含まれていました。組織は、オガデン地方におけるソマリ人の自治権の拡大、さらにはエチオピアからの分離独立を主な目標として掲げました。

ONLFはエチオピア政府軍との間で激しい武力衝突を長年にわたり繰り返しました。エチオピア政府軍が、アメリカなどからの強力な軍事支援を受けていた対テロ戦争の枠組みの中で増強される一方、ONLFへの支援は主にイスラム系団体からのものにとどまり、軍事力においては政府軍に対して著しく劣勢な状況にありました。

組織の指導者はムハンマド・オマル・オスマンが務めていました。国際連合安全保障理事会は、ONLFがソマリアの過激派組織「アル・シャバーブ」と関係を有している可能性を指摘しましたが、ONLF側はこの関係を否定していました。

主な活動と経過

1984年: オガデン戦争の敗残兵などを中心に結成されます。
1994年: エチオピア政府軍に対する本格的な武装闘争を開始しました。
2005年: 南アフリカ共和国の仲介による和平交渉が試みられましたが、合意には至らず決裂しました。
2006年: エチオピア政府軍が約2万人の地上部隊と航空機を投入する大規模な掃討作戦を展開し、ONLFとの全面戦争に近い状態となりました。しかし、オガデン地方の砂漠という地形的な特性に加え、地理的に孤立した環境も影響し、政府軍の作戦はONLFを完全に排除するには至りませんでした。この頃、ONLFはエチオピア東部地域で活動する外国資本に対し撤退を警告し、同年9月には国際機関の職員2名を一時的に拘束する事件を起こしました。これは、当時この地域で資源探査を行っていた中国系石油会社の従業員と誤解した可能性があるとされています。
2007年: 最も深刻な事件の一つとして、4月24日早朝、中国石油化工集団（シノペック）が進めていた油田開発施設を襲撃しました。この襲撃により、警備にあたっていたエチオピア軍との間で激しい戦闘が発生し、中国人技術者9名とエチオピア人警備員ら65名が死亡、中国人7名が拉致されるという結果を招きました。
2018年: 長年にわたる武力衝突は、この年に大きな転機を迎えました。ONLF内部で和平を求める声が高まったことなどを背景に、同年7月、エチオピア政府はONLFのテロ組織指定を解除しました。これに応じる形で、ONLFも8月に一方的な停戦を宣言。最終的に、同年10月にはエチオピア政府とONLFの間で正式な和平合意が締結され、長年にわたる武装闘争は終結しました。

この和平合意により、ONLFは武装解除を進め、政治運動へと軸足を移していくこととなりました。

もう一度検索