オキヒラシイノミガイ

オキヒラシイノミガイ

概要

オキヒラシイノミガイ（沖平椎の実貝）は、学名を Pythia cecillii または Pythia cecillei とし、有肺目オカミミガイ科に属する巻貝です。この貝は、東アジアの特定の地域にのみ生息し、主に汽水域に囲まれた環境に見られます。生息地としては、ヨシ原や落ち葉の下、漂着物の陰などが挙げられます。日本では「オキヒラシイノミ」とも呼ばれることがありますが、和名の末尾の「貝」を省略した形の呼称です。

オキヒラシイノミガイの種小名については、フランス海軍の提督ジャン＝バティスト・セシーユへの献名とされており、正しい学名は cecilil ですが、慣用的に cecillei という形でも広まっています。和名の「オキ」は、明治時代にこの貝を長崎に持ち込んだ沖荘蔵氏に関連して命名されました。

分布

オキヒラシイノミガイは、ベトナム北部、中国南部、日本の九州西部、山口県で確認されています。しかし、南西諸島には記録がなく、分布域は限られています。

形態

成体のオキヒラシイノミガイは、殻のサイズが25mmから15mm程度であり、稀に30mmを超えるものもあります。この種は、日本産のオカミミガイ類の中では大型に分類されるもので、特に殻の形状はドングリに似ており、背面が平らで左右が鈍く角張っています。殻口は水滴形であり、成長するごとに外に張り出す特性があります。

殻は褐色で、色の変異が非常に多く、時には灰白色や淡紫色を呈することもあります。また、内部は他のオカミミガイ科と同様に、螺旋部がなく広い一室構造になっています。軟体部は黒灰色で、触角は尖っています。

生態

オキヒラシイノミガイは、河口や内湾のヨシ原、さらには潮間帯の土壌表面や潮上帯の落葉堆積物の下に生息しています。昼間は湿度が保たれた暗い場所に隠れています。交尾は他の個体と行い、産卵は白色の卵をゼラチン状の物質で包んで行います。

幼生期における殻は左巻きですが、成長の過程で右巻きに変化します。幼貝は他種と似ているものの、既に独自の形状を持っています。

分類

オキヒラシイノミガイに関する分類情報は、かつての記録に基づいており、原記載は1847年に発表されたものです。属名の Pythia は古代ギリシアの神託に由来し、豊富な背景を持つことがわかります。

類似種

この種に似た貝が東南アジアには多く存在し、特に南西諸島に分布する P. pantherina や P. pachyodon 、 P. nana といった種があります。

人との関係

オキヒラシイノミガイは、人間の活動による生息環境の喪失が懸念されており、特に日本では絶滅危惧の対象とされています。環境省のレッドリストでは、「絶滅危惧I類」に分類され、捕獲が禁止されている地域もあります。こうした取り組みは、生息地の保護と維持に向けた重要な進展といえるでしょう。

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