オギュスタン・バリエ

オギュスタン・バリエ（Augustin Barié, 1883年11月15日 - 1915年8月22日）は、20世紀初頭のフランスで活躍した作曲家であり、卓越したオルガニストでもありました。わずか31歳という若さでこの世を去った彼は、その短い生涯のため、残された作品数は決して多くありません。しかし、その限られた作品の中に、彼の非凡な才能が息づいています。

生まれながらに視力を失っていたバリエは、そのハンディキャップを乗り越え、音楽の道を志しました。彼は特にオルガン演奏において頭角を現し、当時のフランスを代表するオルガニストであり教育者であったアレクサンドル・ギルマン（Alexandre Guilmant）とルイ・ヴィエルヌ（Louis Vierne）という二人の巨匠のもとで専門的な研鑽を積みました。ギルマンはオルガン音楽の伝統を重んじ、ヴィエルヌはより近代的な響きを探求した人物であり、異なる個性を持つ彼らの指導を受けることで、バリエは幅広い音楽的素養を身につけたと考えられます。

優れたオルガン奏者となったバリエは、パリにある由緒ある教会、サン＝ジェルマン＝デ＝プレ教会のオルガニストに任命されました。この教会は長い歴史を持ち、その大オルガンは多くの著名な音楽家によって演奏されてきました。バリエはここでオルガニストとしての手腕を発揮し、その演奏によって多くの人々を魅了しました。視覚に頼ることのできないオルガニストにとって、複雑なストップ操作や複数の鍵盤、ペダルを駆使する演奏は極めて高度な技術と集中力を要しますが、バリエは見事にこれをこなしました。

バリエは作曲家としても活動しましたが、彼のキャリアは不運にも早すぎる死によって断ち切られてしまいました。第一次世界大戦が激化するさなかの1915年8月22日、彼は脳内出血により31歳で亡くなりました。もし彼が長生きしていれば、フランス音楽史にさらなる重要な足跡を残したであろうことは想像に難くありません。

残された作品は少ないものの、彼の代表的なオルガン作品として、特に以下の楽曲が挙げられます。

オルガン交響曲 変ロ長調 作品5（Symphonie pour orgue en si bémol majeur Op. 5, 1911年）
悲歌（Élégie）
オルガンのための3つの小品 作品7（Recueil de Trois Pièces pour orgue Op. 7, 1911年）
Marche（行進曲）
Lamento（哀歌）
Toccata（トッカータ） ロ短調

特に「オルガンのための3つの小品」に含まれるトッカータは、彼の作品の中でも最もよく知られており、オルガニストにとって重要なレパートリーの一つとなっています。その情熱的なパッセージと劇的な展開は、聴く者に強い印象を与えます。

オギュスタン・バリエの生涯は、視力を失いながらも類まれな音楽の才能を開花させた輝きと、志半ばで命を落とした悲劇性に彩られています。残された作品は少ないながらも、特にオルガンのための楽曲は今日でも演奏され、彼の名前はフランス・オルガン楽派の重要な一員として記憶されています。もし彼が長い人生を歩むことができたなら、どれほど素晴らしい音楽を生み出したであろうか、その可能性を思うとき、彼の夭折が改めて惜しまれます。

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