アレクサンドル・ギルマン

アレクサンドル・ギルマン（Alexandre Guilmant）は、1837年3月12日にフランスのブローニュ＝シュル＝メールで生まれ、1911年3月29日にムードンでその生涯を終えた、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの重要なオルガニストであり作曲家です。

彼は最初に父親から音楽教育を受け、その後、ベルギーの優れたオルガニストであるジャック＝ニコラ・レメンスに師事しました。キャリアの初期には、故郷でオルガン奏者および音楽教師として活動しました。彼の才能は次第に認められ、1871年にはパリにある聖トリニテ教会の首席オルガニストに任命されました。この教会は後に、20世紀を代表するオルガニスト・作曲家であるオリヴィエ・メシアンがオルガニストを務めた場所としても知られています。

1878年以降、ギルマンはヴィルトゥオーソ（超絶技巧の演奏家）として国際的な名声を確立します。旧トロカデロ宮殿で開催されたコンサートを皮切りに、彼はヨーロッパ各地で精力的な演奏旅行を行い、優れたオルガン演奏を披露しました。さらに、フランス人作曲家としては初めてアメリカ合衆国での演奏旅行を実現させ、その名を広く知らしめました。これらの活動を通じて、彼はオルガン音楽のレパートリーを拡大し、その魅力を世界に広めることに大きく貢献しました。

教育者としても重要な足跡を残しています。1894年には、シャルル・ボルドやヴァンサン・ダンディらと共にパリ・スコラ・カントルムの設立に携わり、音楽教育の発展に尽力しました。1897年には、シャルル＝マリー・ヴィドールの後任として、権威あるパリ音楽院のオルガン科教授に就任し、マルセル・デュプレをはじめとする多くの優れたオルガニストを育て上げました。

演奏家、教育者としての活動に加え、ギルマンは音楽研究者・編纂者としても功績を残しています。アンドレ・ピロと共同で、『オルガンの巨匠の書庫（Archives des Maîtres de l'Orgue）』を刊行しました。これは、1894年から1914年にかけて全10巻にわたり出版され、フランスの古典的なオルガン音楽を後世に伝える上で極めて重要な資料となっています。また、外国の古典的なオルガン音楽を集めた『オルガン楽派の古典（l'École classique de l'Orgue）』という曲集も出版しています。

作曲家としては、自身の楽器であるオルガンのための作品を数多く残しています。オルガン・ソナタ全8曲（しばしば交響曲的な形式で書かれている）や、様々な形式による小品集、典礼用の作品などが代表的です。他のジャンルの作品は演奏機会がオルガン曲ほど多くはありませんが、2曲のオルガン付き交響曲を含む管弦楽作品、合唱曲、室内楽曲なども作曲しています。これらの作品は、充実した和声と堅固で保守的な形式を特徴としています。特に、トロンボーンとピアノのための「交響的断章 Op. 88」は、現在ではトロンボーン奏者の主要なレパートリーの一つとして広く認識されています。

私生活においては、1909年に最愛の妻を亡くしたことで深い悲しみに沈み、自身も病に冒されました。そして、その数年後の1911年に世を去りました。アレクサンドル・ギルマンは、その生涯を通じてオルガン音楽の普及と発展に多大な貢献をした、フランス音楽史において重要な人物の一人です。

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