オシダ

オシダ（Dryopteris crassirhizoma）

オシダは、オシダ科に属する夏緑性のシダ植物で、北海道、本州、四国に分布しています。特に四国や西日本では比較的珍しく、山地帯や亜高山帯の森林の林床に見られますが、低地では空中湿度の高いスギ林を好んで生育します。

形態

根茎は太く短く、直立した形状をしています。葉は大きく、60cmから150cmほどの2回羽状複葉が漏斗状に広がります。鱗片は光沢のある明褐色で、長卵形から線形をしており、中軸や葉柄に密集して付着しています。羽片は狭披針形で先端が尖り、裂片は狭長楕円形で先端が丸みを帯びています。胞子嚢群は裂片の中脈両側に並び、円腎形の包膜で覆われています。胞子は二面体型で、9月から10月にかけて成熟し、胞子嚢が裂開します。胞子の熟す時期や胞子の形には個体差が見られます。

利用

オシダは観賞用としても楽しまれており、王立園芸協会のガーデン・メリット賞を受賞しています。また、薬用植物としても利用されてきました。かつては根茎が「綿馬根（めんまこん）」と呼ばれ、駆虫薬として用いられていたとされています。日本薬局方の初版にも「綿馬」として記載がありましたが、当時は和名と種の対応に混乱が見られました。初版ではAspidium filix-masが綿馬とされていましたが、この学名はセイヨウオシダのシノニムであり、現在のオシダと同種であったかは定かではありません。また、オシダの根茎は「貫衆」とも呼ばれることがありますが、貫衆は本来ヤブソテツの中国名であり、同様に現在のオシダが用いられていたかは不明です。なお、現行の日本薬局方第18版には、「綿馬」も「貫衆」も医薬品各条生薬としては記載されていません。

近年、オシダから単離されたアシルフロログルシノール（フラバスピジン酸類）が、試験管内で抗菌作用と脂肪酸合成酵素阻害作用を示すことが明らかになりました。また、別の成分であるsutchuenoside Aとケンペリトリンは、生体内で抗寄生虫活性を示すことがわかっています。

雑種

オシダは、同じオシダ属の様々なシダと自然交雑することが知られており、以下の雑種が確認されています。

フジクマワラビ（D.×fujipedis Sa.Kurata） - クマワラビとの雑種
ネイチワラビ（D.×neichii Nakaike） - シラネワラビとの雑種
タニオシダ（D.×rokunohensis Nakaike） - タニヘゴとの雑種
ミヤマオシダ（D.×tohokuensis Nakaike） - ミヤマベニシダとの雑種
クマオシダ（D.×tokudae Sugim.） - ミヤマクマワラビとの雑種
フジオシダ（D.×watanabei Sa.Kurata） - オクマワラビとの雑種
イノウエシダ（D.×yasuhikoana Sa.Kurata*） - オオクジャクシダとの雑種

これらの雑種は、胞子が不稔性であることが示唆されています。

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