オショロコマ

オショロコマの概要

オショロコマ（学名：Salvelinus curilus）は、サケ目サケ科のイワナ属に属する魚で、寒冷気候に特化した生態を持つことで知られています。一般にはカラフトイワナとも呼ばれ、主に北海道の山岳渓流に生息しています。これらの地域では、生息環境が非常に限られており、特定の水系にのみ分布しています。特に大雪山系や日高山系、知床半島などで多く見られ、自然分布の南限は太平洋側では十勝川水系、日本海側では千走川水系とされています。

生態と生活環境

オショロコマの産卵期は10月から11月にかけてで、日本に生息する個体はほとんどが河川残留型です。しかし、ほんの一部は降海して生活することもあります。通常は河川の最上流部に見られますが、流れが短い川では源流から河口にかけて広がることもあります。また、札幌市近郊の空池のように、湧き水が常に出ている場所では止水環境でも生息が確認されています。

この魚は特徴的ないくつかの外見を持っており、河川残留型は背面に白い斑点があり、体側にはパーマークや朱点があるため、アメマスと識別することができます。成長に伴って、個体により腹部や鰭の色が濃くなることもあります。特に、千走川の支流では無斑点の個体が観察されることがあります。全長は通常約20センチメートルで、流下する水棲昆虫や河辺の樹木から落ちてくる昆虫を主に餌としています。また、底に生息するトビケラやカゲロウなども食べることができ、食物の競争に柔軟に対応します。従って、アメマスが生息する河川では棲み分けが行われることがあります。

降海型は、特に高緯度の地域で多く見られ、2年から4年の河川生活を経て海に降ります。この際、パーマークが消え、朱点も淡い色になります。冬期には、イトウのように河川を遡上し、湖や流速の緩やかな深いポイントで越冬を行います。

保全状況と課題

オショロコマは現在、絶滅危惧II類（VU）として環境省のレッドリストに登録されています。これは、絶滅の危険があるという明確な状況には至っていませんが、状況が危惧され始めています。2007年の環境省の発表により、以前の準絶滅危惧からこのカテゴリに引き上げられました。特に知床半島などの生息域では、外来種であるニジマスやブラウントラウトとの競争が見られ、アメマスの生息域拡大も影響しています。また、釣り人による乱獲や生息環境の破壊（林道工事、河畔林の伐採、堰堤の設置など）も問題視されています。

生息域の北側にはホッキョクイワナが見られますが、両種間の違いについては議論があります。特に産卵場所の違いや生態の差異が指摘されており、オショロコマは河川に産卵し、ホッキョクイワナは湖に産卵します。しかし、イワナ属全体を通じて日本の河川間には遺伝的多様性の違いがあり、各河川に特有の繁殖集団が形成されています。したがって、他の河川からの移植を避けることが、種の保護において重要となります。

近年、オショロコマは本州でも見かけられるようになりましたが、これは釣り堀から逃げた個体や釣られずに残ったものと考えられています。過去には放流されたベニザケの幼魚として害魚と見なされ、駆除されたこともあります。このような背景からも、オショロコマの保護が急務とされています。

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