アメマス

アメマス（雨鱒）

アメマス（学名: Salvelinus leucomaenis leucomaenis）は、サケ科イワナ属に分類される魚です。イワナの基亜種とされており、河川に留まるものはエゾイワナと呼ばれます。

分布

アメマスの自然分布域は、ユーラシア大陸の東端、日本では山形県以北の日本海側と、利根川以北の太平洋側です。

生態

体長は14cmから70cm程度まで成長します。産卵期から孵化までの生活史はイワナとほぼ同様ですが、アメマスはより冷たい水域を好む傾向があります。サクラマスやサツキマスと同様に、孵化後すぐに海へ下ることはなく、2～3年ほど河川で過ごした後、スモルト化して降海します。メスは降海する個体が多い一方、河川に残留して産卵する個体もいます。河川残留型のメスは、2歳から5歳の年齢層で構成され、尾叉長は127mmから284mmの範囲であることが報告されています。産卵後も生き残り、翌年以降の繁殖に参加する個体も存在しますが、降海後の詳しい生態はまだ解明されていません。

河川残留型のアメマスは、水生昆虫や河畔の木から落下する生物、プランクトンなどを餌としています。一方、降海型は魚（サケの稚魚など）やプランクトンなどを捕食します。

また、ヤマメとエゾイワナが交雑した個体である「カワサバ」が、北海道内で確認されています。

人間との関わり

近年では、神奈川県をはじめとする関東地方でも放流が行われるようになりました。北海道では水産魚種に指定されていないため、ゲームフィッシングの対象として人気があり、特に降海型は「海アメ」と呼ばれ、遊漁船や沿岸からのルアー釣りなどが盛んに行われています。

しかし、秋鮭の定置網で混獲されることがありますが、一般消費者向けに流通することはほとんどありません。また、サケの稚魚を餌として捕食するため、一部の漁協ではサケの資源保護を目的としてアメマスの駆除を行っています。

放流外来魚との関わり

北海道の千歳川支流である紋別川では、放流されたブラウントラウトとの間で餌や生息場所の競合が発生し、アメマスの生息域が狭められ、生息数の減少が懸念されています。さらに、ブラウントラウトとの自然交雑個体も確認されています。

伝承

北海道の摩周湖には、巨大なアメマスが生息するという伝承があります。その大きさは鯨ほどもあり、湖上の船を転覆させることもあると言われ、摩周湖の主として語り継がれています。また、支笏湖にも同様の巨大アメマスの伝承があり、頭と尾が湖の両岸に届くほどの大きさだとされています。

大和民族の間には「地下に巨大なナマズが住んでおり、それが暴れることで地震が起きる」という伝承がありますが、アイヌ民族には「地下に巨大なアメマスが住んでおり、それが暴れることで地震が起きる」という、よく似た言い伝えがあります。地震が発生すると、囲炉裏の灰に小刀や火箸を刺し、「エッケウ！エッケウ！」と唱えます。「エッケウ」は腰骨のことで、アメマスの腰骨を押さえつけ、地震を鎮める呪いです。

食用

アメマスの食味は、他のサケ・マス類に比べて水っぽいとされています。そのため、一夜干しにして水分を抜き、油を使った調理法が適しています。

参考文献

さけ・ます資源管理センターニュースNo. 10 2003年2月 (PDF)

関連項目

魚の一覧
イワナ
ミヤベイワナ
雨鱒の川

外部リンク

北海道支笏湖および茂辺地川産アメマスの形態比較 北海道東海大学紀要. 理工学系 8, 51-60, 1996-03-21

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