オスカル・ウンベルト・メヒア・ビクトレス

オスカル・ウンベルト・メヒア・ビクトレス：グアテマラの軍政終焉と民主化への移行

オスカル・ウンベルト・メヒア・ビクトレス（1930年12月9日 - 2016年2月1日）は、グアテマラの軍人、政治家であり、1983年から1986年まで同国の大統領を務めました。彼の政治的キャリアは、グアテマラの激動の時代、特に軍事政権の終焉と民主化への移行期に深く関わっています。

生涯と軍歴

メヒア・ビクトレスはグアテマラシティで生まれ、1948年に軍学校に入学しました。1953年に歩兵隊の少尉として軍隊に入り、着実に昇進を重ねました。1980年には准将に昇進し、軍の監察官、国防省の次官、エフライン・リオス・モント大統領時代の国防相など、重要な役職を歴任しました。これらの役職を通じて、彼はグアテマラ軍における影響力を高めていきました。

クーデターと大統領就任

1983年8月8日、メヒア・ビクトレスは参謀長のロペス・フエンテスと共にクーデターを起こし、当時の大統領エフライン・リオス・モントを失脚させました。クーデターの背景には、若手将校が政権を掌握することに対する古参将校の反発があったとされています。クーデター後、メヒア・ビクトレスは軍事評議会の長となり、その後大統領に就任しました。彼は国務会議を解散し、自らの政権を確立しました。

大統領としての政策

大統領として、メヒア・ビクトレスはゲリラに対する弾圧を強化する一方で、自由な選挙に向けた準備を進めました。1983年12月にはゲリラに対して恩赦を行いましたが、弾圧はむしろ激化しました。また、彼の政権下では、フランシスコ会の聖職者が誘拐され、殺害されるという事件も発生しました。

民主化への移行に向けて、メヒア・ビクトレスは1984年に制憲議会を招集し、1985年5月31日には新しい憲法を公布しました。この憲法は現在のグアテマラ憲法として機能しています。1985年11月には大統領選挙が行われ、キリスト教民主党のビニシオ・セレソが次期大統領に選出されました。1986年1月にセレソが大統領に就任したことで、グアテマラの軍政時代は終焉を迎えました。

退任後の訴追と晩年

退任に際し、メヒア・ビクトレスは1982年3月23日から1986年1月14日までの軍およびゲリラの犯罪行為に対する恩赦令を発令しました。しかし、この法令は後に破棄され、彼は人権団体から訴追されることになりました。1999年には、リゴベルタ・メンチュウら迫害の被害者が、メヒア・ビクトレスを含む元政府高官をスペインの裁判所に訴えました。2011年には、グアテマラ内戦中の先住民マヤ人に対する虐殺の責任を問われましたが、認知症のために裁判を免れました。

メヒア・ビクトレスは長く病気を患い、2016年に85歳で亡くなりました。彼の死は、グアテマラ現代史における重要な一章の終わりを意味しています。

評価

メヒア・ビクトレスの政治的遺産は複雑です。彼は軍政の終焉と民主化への移行を主導した一方で、先住民虐殺の責任も問われています。彼に対する評価は、グアテマラの歴史における軍事政権の役割と、その後の民主化の過程を理解する上で重要な視点を提供します。

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